空前のランニングブーム、昨日の東京マラソンも大分盛り上がっていましたね。

10mさえ走る気になれない人にはフルマラソンなんて狂気の沙汰にしか思えないでしょうが、世の中にはフルマラソンなんて目じゃない程の長距離を走るレースがあることをご存知ですか?

それはウルトラマラソンと呼ばれ、100kmマラソンや24時間マラソンなど超絶的な距離を走るものです。
中でも最も過酷なレースのひとつと言われているのがサハラ砂漠を250kmを走るサハラレースです。

一体どこの物好きが何を考えてそんなレースに参加するのか、話を聞いてみることにしました。

お答え下さったのは2011年サハラレースに参加された黒澤洋介さん(37歳)。一体どんなレースなのでしょうか?

「サハラ砂漠250kmを7日間かけて走ります。とはいえ最終日は2kmだけのセレモニー的な日ですし、オーバーナイトといって一晩走り続けるステージの翌日は休みなので実質5日間で走りきることになります」

「コースは砂砂漠もあれば岩砂漠のようなところもあります。途中砂丘のようなところで360度どこを見渡しても自分しかいないということもありましたね」

―― かなり過酷で危険なレースですね。

「はい、ですから主催者も万全の体制を期しており、持っていく荷物まで細かく規定されています」

公式ホームページのリストを見るとなんとリュック、寝袋をはじめトイレットペーパー、常備薬、食料までにおよぶ29種類に渡る必需品とiPod、デジカメやスポーツブラに及ぶ細かい22種類の参考備品が記されていました。

「食料も全部持参しなければいけないんです。しかも一日2000kcal以上というような規定まであります。それらを全行程自分で背負って走らなければいけないので、できるだけコンパクトになるように気を使いますね」

黒澤さんがレース中に書いたオフィシャルブログには「Equipment List (携行品リスト)」が載っており、そこを見るだけでもかなりかなり楽しめます。

―― どのような人が参加するのでしょうか?

「20カ国以上から150人くらい参加していました。そのうち日本人は13人です。
中には25時間という驚異的なタイムで走る人もいますし、歩いて参加する方もいますね」

「私が出場したときは慶應大学の応援指導部の主将も参加していて、彼が各ステージの前にエールを送るというのが恒例になっていました。出場者の中で大人気でしたね。皆少しでも荷物を軽くしたいのに学生服と革靴まで持ってきていたんです」

―― 黒澤さん自身はやはりかなりのランニング歴をお持ちなのですか?

「いえ、レースは10月だったのですが、走り始めたのは4月です」

―― えー! たった半年? でも他にスポーツはやってらしたんですよね?

「まあ草サッカーをしたり、スノボにいくことくらいはしてましたよ」

普通の運動好きな会社員程度にしか体を動かしていなかった黒澤さん、4月にアタカマ砂漠レースの出場者に知り合ったのをきっかけに走り始めたということです。5月にハーフマラソンに出場し、6月にはゴビ砂漠レースに出た別の人と知り合ったのが契機となりました。

「飲みながら『サハラレースに出よう』と誘われたので、ラップトップでHPを見ていました。そのうち酔いも手伝ってノリでうっかり申し込んじゃったんですよね」

そこから3ヶ月に渡る猛特訓が始まりました。平日会社へ片道10kmの道のりを走り、休日には50kmを走って鍛えたという黒澤さん。レースは楽しかったのでしょうか、それとも二度と出たくないのでしょうか。

「最高でしたよ。もちろん達成感もありますし、世界中に仲間ができました。一緒のテントで過ごしたテントメイトは一生の友だちです」

「それ以上によかったのは、Facebookやブログを通じて知ってもらったことによって、本当に多くの人から『お前もがんばっているからオレも何かにチャレンジするよ』というようなポジティブなメッセージをもらえたことです」

「この無謀でアホなチャレンジが、もの凄くポジティブなヴァイブスになって伝播していったのを肌で感じました。それは何ものにも替えがたい経験でした。
皆さんも絶対に一生に一度はチャレンジした方がいいですよ」

―― それではチャレンジしてみたい人にとって一番大事なことを一つだけ挙げるとしたらなんでしょう?

「申し込んじゃうことです。あまり深く考えると怖くなってしまうので、『ノータイムポチり(=瞬時にクリック)』で申し込みましょう。人間追い込まれると案外なんでもできちゃうものですから」

さわやかにポジティブに語ってくださった黒澤さん、ありがとうございました。
皆さんも「ノータイムポチり」で新たな境地を開いてみたらいかがでしょう?
(鶴賀太郎)
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