リアルなタッチでブルーの富士山が描かれ、そのあまりの美しさと、小さな自宅の風呂場に雄大な富士山……というギャップがなんともおもしろく、眺めていると驚きと笑い、そして感動がこみあげてくる。この絶景をひとり占めしつつ、お風呂に浸かれるなんてとっても贅沢! うちは賃貸なので、持ち家がある人に限られるのが残念なところ……。権田さんに「風呂ンティア」をはじめたきっかけなどうかがってみたところ、
「知り合いのカメラマンさんと『人の家のお風呂に富士山描いたらおもしろそう』と話してて、その人の家の風呂場に描かせてもらったのがきっかけです。カメラマンさんが撮影で家をあけている間、キャットシッターかねて制作しました。そこから、また別の知り合いが依頼してくれたり、口コミで広がっていきました。
画材は水性ペンキ。ペンキで描くのは初めてでしたが、やってみると結構絵の具と一緒なんだなと。混ざるし。ペンキでグラデーションがつくれるとは思ってなかったですね」
これまでに、6軒の家に描かれたんですよね。どれくらいの日数をかけるんですか?
「1面で、シンプルな絵だったら4日間、3泊4日くらい。
わー、寝食を共にしながら、住み込みで制作するんですか。それは、相手との信頼関係が大切になりそう……。依頼者とは家族も同然になりそうですね。
「そうですね。一緒に生活し、一緒にごはんを食べて、一緒に銭湯へ行くので(制作中はお風呂が使えないため)。この『風呂ンティア』をやることで、みんなと仲良くなれました。あと、一番良かったのは、僕はグータラなので朝から晩まで絵を描けるというのが嬉しい」
権田さんの試みはあくまでもアートなので、誰のどんな依頼でも受けるというものではなさそうですが、今後、この記事を読んだ人から「ぜひ、我が家のお風呂にも!」というオーダーが殺到したらどうします?(笑)
「まずは、話します。実際会ってどんな人かを知ってから。はじめは『面白いことをしたいな』というだけだったんですけど、これからも描いていきたいです。数を描けば、なにか見えてくるんじゃないかと思ってます」
(野崎泉)