――まずは、声優アワード主演女優賞の受賞、おめでとうございます。
悠木 ありがとうございます。
――受賞式でのスピーチも聴かせて頂いたのですが、改めて、率直な感想を教えてください。
悠木 これまで尊敬している声優さん方がたくさん受賞されている賞なので、形だけかもしれないけど、その仲間に入れてもらえたのはすごく嬉しいです。一般の人からの投票もある審査方法なので、なおさら嬉しくて、すごくたくさんの人に愛されてるんだなって思ったというか……。私、今月末(3月27日)に20歳になるんですね。先日、別のインタビューで質問を受けた時に、これまでを振り返ってみたら、すごくたくさんの人に、たくさんの愛をもらって育ってきた20年だったなと改めて思って。(声優アワードの)授賞式の時も、みんなが深い愛で育ててくれたから、今、ここに立っていられるんだなと、すごく感慨深かったんです。
――2011年は、悠木さん本人の感覚的にも、特別な変化があった年でしたか?
悠木 う~ん、私としては、それまでの年も毎年変化していたので、去年が特別というわけでは無かったです。でも、去年は日本にすごく大きな事があった激動の年で、そんな時に、心の深いところを描いた作品に参加させて頂く機会が多かったので。例えば、「まどかマギカ」だったり、「GOSICK」だったり。あと、「Aチャンネル」も人間の心の柔らかいところを、いろんな視点から見ている作品だったりするので。皆さんが、そうした作品から何かを感じようと思いながら、見て下さっていたのかなという気がします。
――では、2011年に限った話ではなく伺いたいのですが。これまで、数多くの作品に出演されてきましたが、その中で、声優としての姿勢、意識などに変化はありますか?
悠木 例えば以前は、スタジオでも自分の事で精一杯だったし、自分の演じるキャラクターの心の中をリアルに演じる事をすごく目指していたんです。間とかそういうものでも表現できたら、カッコ良いなとか。でも今は、東日本大震災や、CD活動を始めた事もきっかけになって、見て下さる方に「ああ、楽しいな」と思ってもらうことが、一番の目標になってきました。そこを大事にしてマイクの前に立てたら、アニメを好きって言って下さる方が、より増えるんじゃないかと思ってます。
――さらにファンに近い感覚になったのですね。ところで、主演女優賞受賞後の周囲の反応はどうですか?
悠木 嬉しくて泣いちゃうような事を言って下さる方がたくさんいて。例えば、初めてヒロインを演じさせて頂いた「紅」の松尾(衡)監督には、受賞が決まった時にメールで報告したんです。私にとって、松尾監督は恩師だし、現場のお父さんなので。でも、そんなに褒めてくれる人じゃないから、きっと怒られるんだろうなって思ってたんですね。「調子に乗らないで、頑張れよ」みたいな感じで。そうしたら、すごく暖かい返事が届いて。読みながら、ブワって泣いちゃいました(笑)。お友達もたくさんメールをくれて。一番最初にくれたのは、一緒にラジオ(「あおい・さおりの新番組(`・ω・')」)をやっている早見沙織ちゃんで。「自分の事みたいに嬉しいぞ~」というメールと一緒に、なぜかネギの写真が。そこは意味が分からなかったんですけど(笑)。
――3月はおめでたい事ラッシュで、3月28日には歌手「悠木碧」としての初めてのミニアルバム「プティパ」が発売されますね。最初にソロデビューについての話を聞いた時、どんな気持ちでしたか?
悠木 自分の名前で歌を出せる機会が来るとは思ってなかったので、最初は「お~分野外」とは思ったんですけど(笑)。ちょうど、その頃に新谷良子さんの10周年記念ライブにお邪魔させて頂いたんですね。その時に、新谷さんのファンの方たちって、自分たちが楽しんだりする事もだけど、新谷さんの笑顔のために集まってるんだって気づいたんです。そこまでの関係性って、すごく素敵だし、私もそんな風になれたら良いなって。でもそれは、声優をやっていて、さらに歌も歌ってる人じゃないと、できないことかもしれないなって思ったんです。それで、20歳というきっかけもあったし、新しくそういう表現もできたら楽しいなと思ったので、ワクワクしながら「よろしくお願いします」と伝えました。
――初めてのミニアルバム制作にあたって、まず、どんなCDにしたいというコンセプトがあったのでしょうか?
悠木 ラジオやイベントのトークで、役を演じてない時の私をご存じの方もいらっしゃると思うんですけど。元々、可愛いくいようとしてもボロが出て、面白い事を言いたくなったり、無鉄砲な事をしちゃったりするところがあるんですね。だから、素の悠木碧としても、お芝居の中でも、キュートなんだけど少しシニカルでいじわる、みたいなところがちょっとずつ含められたら楽しいんじゃないかなと、いつも思っているんです。このアルバムでも、そういう形で何かできたら、私らしいというか。悠木碧の名前で出す意味があるんじゃないかなと思って、いろいろとお願いをしました。そうしたら、全部の曲に、良く聴くとちょっと奇妙で怖い部分があったり。クスって笑える部分があったり。良い意味で、変な悪ふざけが入っているんですね。私は音楽の知識がほとんど無いから、すごいザックリしたイメージでしかリクエストできなかったのに、本当にプロのアーチストの方たちはすごいですよね。みなさんに一杯わがままを言って、自分の夢を叶えてもらいました。
――具体的には、どんな風にお願いしたのですか?
悠木 この曲はこんな主人公で、こんなお話の物語を作ってもらえると嬉しいです、とか。あとは、全体として移動遊園地をテーマにしようという話になっていたので、この曲は観覧車、この曲はメリーゴーランドでお願いします、くらいのザックリさでした。
――非常に豪華なアーチストが参加されています。悠木さんから、リクエストした方もいるのですか?
悠木 例えば、DECO*27さんは、スタッフさんたちと打ち合わせている中で、私が“メチャクチャ大好きです”というお話をして、お願いして頂いたんです。
――DECO*27さんは、ニコニコ動画出身のアーチストですが、悠木さんもニコニコ動画などで聴いてるんですか?
悠木 はい。以前からずっと好きで、作業用BGMですよ(笑)。でも、つい聴いたり見たりしちゃうから、作業にならないんですけどね。bermei.inazawaさんは、資料を聴かせて頂いた時に、「この方でお願いします!」と思いました。
――全体を通して聴くと、アルバムとしてのコンセプトはしっかりとあるのですが、その中でも非常にバラエティのある1枚になっていますよね。このいろんな面を持っている感じも、声優としての悠木さんのイメージに重なるな、と思いました。
悠木 ありがとうございます。例えば、ソロで歌う事になると「素の自分を見せます」といったコンセプトもあると思うんですけど。じゃあ、私の場合、素の悠木碧ってなんだろうと思った時、自分でも分からなかったんです。
(丸本大輔)
(後編に続く)