小学生の頃から読み始めて、いまも大好きなマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』。

「ジョジョ」シリーズは、1986年から『週刊少年ジャンプ』で連載がはじまり、現在は『ウルトラジャンプ』で連載が続いている。
コミック累計7500万部以上を発行し、発売されたばかりの第八部『ジョジョリオン』第2巻を加えるとコミック巻数は現在106巻! そんなジョジョの名言集が2冊同時に発売された。

それは『ジョジョの奇妙な名言集』の <Part1~3><Part4~8>。<Part1~3>では第一部「ファントムブラッド」から第三部「スターダストクルセイダース」まで。<Part4~8>では第四部「ダイヤモンドは砕けない」から第七部「スティール・ボール・ラン」、さらに第八部「ジョジョリオン」の第1巻分まで、計105巻分からチョイスした名言が収録されている。

それにしても、これだけの数から名言集をどうやって選別していったのか? 集英社新書編集部、長谷川洋一さんに本書をつくる上で苦労したところ、こだわりのポイントを教えてもらった。
「 『ジョジョ』のセリフは『ふるえるぞハート! 燃えつきるほどヒート!!』『だが断る』といった有名なセリフ以外も、心に残る強い言葉ばかりです。すべてが『名言』といっても過言ではありません」と長谷川さん。

これらセリフはジョジョのメインテーマである「人間讃歌」を中心に選別した、と本書には書かれていたけれど。
「作品のテーマである『人間讃歌』に沿って、私たちも『人間とは何か』という観点から言葉を選んでいったのですが、ページに限りがありますので、選択は大変な作業でした」

ただ、105冊分あるので、「自分の中ではあのセリフがよかったのに、載ってない!」なんて声もあるかもしれない。
「コミックス全冊を会議室に並べて、スタッフが何週間もかけてのセレクト作業でしたが、泣く泣く落としたセリフももちろんあります」

2冊同時発売なので、作業量は通常の2倍に!
「チェック作業も膨大で、デザイナーさん、校閲さん、ライターさん他にも、大変な思いをさせてしまいました。しかし本書に関わっていただいた全員が『ジョジョ』のファンで、皆さん頑張ってお仕事してくださいました。ここで改めて皆さんに感謝するとともに、これも『ジョジョ』という作品の魅力というか、人を惹きつける『引力』のなせるわざだと感じています」

本書に掲載されている個人的にグッとくるフレーズたちをピックアップすると、第一部、ポコの「ねーちゃん! あしたっていまさッ!」から、第四部、岸辺露伴の「いいかい! もっとも『むずかしい事』は! 『自分を乗り越える事』さ! ぼくは自分の『運』をこれから乗り越える!!」、シリーズで一番好きな第五部のジョルノとブチャラティの会話から登場した「覚悟」、第七部、ジャイロ・ツェペリの「納得」のフレーズなどなど。

ちなみに、第一部、エリナの唇をディオが奪った時の仲間のセリフ「そこにシビれる! あこがれるゥ!」ももちろん入っていて、キスシーンの「ズキュウウゥン」も擬音集コラムページで収録されている。

「フランス文学者の中条省平先生が、作品内のセリフから「人間賛歌」のテーマを哲学的に読み取る試みをしているのも、新書らしい読みどころです(<Part 1~3>掲載)。また、荒木先生ご自身にも『言葉』を軸に『ジョジョ』を語っていただきましたが(<Part4~8>掲載)、先生がこれだけ長時間、単独で語られる機会はあまりありません。『ジョジョ』の成り立ちなども明かされていますので、とても貴重な文章になったと思います」

荒木先生自らが、セリフ誕生のきっかけや、第一部、ツェペリ男爵がカエルを潰さずに岩を砕いたシーンの「メメタァ」の擬音の解説や、「ジョジョ」に対する想いまでを語っていて、読んでいて「そうだったのかぁ」と心に染み渡る。

「荒木先生も本書を気に入っていただけたようです。これは本当に嬉しいことです」

全てのジョジョファン、これからジョジョを読んでみようという人に向けて、「ここを楽しんでほしい」ところを教えてもらった。
「まずは『ジョジョ』の『言葉』の世界、たっぷりとご堪能ください。本書で『名言』を一気に読んでみると、コミックスでストーリーを追って読むのとまた違った印象を受けるのではないでしょうか。読んだ方それぞれに『ジョジョ』の新たな魅力を発見できると思います」

名言とともに、その場面のカットも掲載されていて、名場面集として眺めるのも楽しい。ジョナサン vs ブラフォード、ジョセフ vs ワムウ、ポルナレフ vs ヴァニラ・アイス、ブチャラティ vs ペッシ、エンポリオ vs プッチ神父、ジャイロ vs リンゴォなどのシーンが生き生きとよみがえってくる。

「また、25年もの長期連載作品ですので、これから『ジョジョ』を読み始める方で、「どこから読めばいいか」と迷っている方もいらっしゃるかと思いますが、本書を読めば『ジョジョ』の主要キャラクター、各部の大まかなストーリーは分かるようになっていますので、『ジョジョ』の入門ガイドとしてもお使いいただけます」

「またかつて『ジョジョ』を読んだ方も、それぞれのセリフには『収録巻・タイトル』が付いているので、『あのエピソードはコミックス何巻くらいだったかな』と思い出す手がかりになります。いわば辞典の索引のような使い方もできると思います。
多彩な楽しみ方ができる2冊ですので、ぜひご覧いただければ幸いです」

年齢を重ねてきたいま、あらためて読み返すと、当時ではスルーしていたフレーズにグッときたり、とあらたな発見がある。『ジョジョの奇妙な名言集』、気になった方はぜひ手に取ってみてほしい。
(dskiwt)
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