花見シーズンも終わり、桜の木には青葉がみなぎってきた今日このごろだが、先日、「桜の寿命が60年」という噂を耳にした。

日本で最も有名な桜は、「ソメイヨシノ」という品種なのだが、これは第二次大戦後、全国で一斉に植樹が始まったものなのだそうだ。
今年で終戦から67年を迎えるわけだが、もしソメイヨシノの寿命が60年だとしたら、そろそろ日本全国の桜が寿命を迎えて、日本から桜が無くなってしまったりしないのだろうか?

もし桜が無くなってしまったら、卒業式や入学式の風情がなくなったり、入試に合格した時に「サクラサク」という電報が打てなくなったり、花咲か爺さんのお話を全面的に改修する必要がでてきたり、色々と大変である。なにより、屋外で合法的にバカ騒ぎができる(ただし周囲に迷惑をかけない程度に)、花見を行う口実がなくなってしまうのは、大変ゆゆしき問題である。

この問題に対して、 昭和30年(1955年)ごろから桜の樹勢回復(樹木の生育状態を回復させること)の活動を積極的に行ってきた、青森県弘前市に、話を伺ってみた。

まず、気になる桜の寿命についてだが、市の担当者の方によると、「正確な寿命についてはよく分かっていませんが、きちんと手入れをすれば、寿命は60年よりも長くなると思います」とのこと。事実、弘前市にある弘前公園の桜は、元気に花を咲かせているどころか、「樹齢約130年のソメイヨシノ」「日本最大(幹周り)のソメイヨシノ」という2大ソメイヨシノも現役でがんばっているそうである。

寿命60年説については、桜の植樹から数十年が経過した昭和50〜60年ごろに、枝の伸びが悪くなるなど、桜が弱っていく現象が全国的に見られたことから、そのような噂が広まった可能性があるそうである。

弘前市で実際に行っている桜の手入れは、大きく分けて、肥料をあげる、剪定(樹木の枝を切り、形を整えたり日光や風の通しを良くすること)をする、薬剤を散布する、の3つ。薬剤散布については、害虫によって葉っぱや幹が食べられることを防ぐために実施しているそうだ。弘前市にならい、岩手県や秋田県においても、同じように桜の手入れが積極的に行われているとのこと。

弘前市では早くから桜の手入れを実施してきたが、桜にまつわることわざとして、「桜折る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」というものがある。桜を傷づけるとそこから腐りやすいことから、庭木の手入れ方法を教えたものなのだが、このことわざにあるように、桜はあまり手入れしない方がよい、という考えがあり、この考えにもとづいて手入れをせずに放っておいた結果、桜が弱り、寿命を迎えてしまうという場合もあるようである。

また、きちんと手入れをしていても、現代社会を生きる桜には、大気汚染、昆虫の食害、枝の切断など、日本全国のサラリーマン同様、様々なストレスにさらされて生きている。
東京都荒川区西日暮里にある、通称だんだん桜(ソメイヨシノではなく大島桜)が、去年伐採されたニュースを覚えている人も多いかもしれない。この桜は、地域住民などによって、肥料の供給や剪定がされていたようで、桜の花は毎年しっかり咲いていたのだが(伐採も、桜の花が散った後に行われた)、幹の腐敗が進み、倒れる危険性があるため、やむを得ず伐採されたそうである。

ちなみにこのだんだん桜は、2本の苗の接ぎ木(土台となる木に切り取った一部の木を植えること)に成功しており、数年後には植樹が可能になるのだそう。

ということで、きちんと手入れがされれば、桜の寿命は60年よりも長いようであり、すぐに桜が見られなくなってしまう、ということはなさそうである。

ソメイヨシノの花言葉は「純潔」「優れた美人」。60年といわず、いつまでも清らかな桜をみたいもんです。
(エクソシスト太郎)
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