サッカー日本代表戦やプロ野球にとどまらず、バレー、F1、格闘技とあらゆるスポーツを独自の視点でコラム化。
そこで、この本の狙い(があるとすれば)と、普段何を考えてブログを執筆しているのかを探るべく、フモフモ編集長の“中の人”へのインタビューを敢行。前後編でお届けします。
【問屋は卸してるんだけど、客は買ってくれない】
フモフモ編集長(以下、フモ) 僕、この本に全く自信がないんですよ。何度も読み返してると、もうどこで笑っていいのかわからなくなってきて。面白かったですか?
─── フモフモコラムを毎回読んでいますが、そのいつもの軽い、おバカなテイストも残しつつ、今回は「オリンピック観戦術」ということで、なでしこJAPANや柔道といったおなじみのものから、それこそ五輪でしか見る機会がないヨットや射撃のようなマイナー競技についても発見のあるコラムがあって全編楽しめました。
フモ ヨットに限らずなんですが、普段から「おや?」という部分を広げていくのが好きなんです。スポーツの世界にはまだまだ「おや?」があるんだというのを、この本を読んで、オリンピックを見て感じでいただきたいですね。
─── 「オリンピック中継における有名人当てクイズ」だったり、「アスリートステマを見破れ」といったコラムは、まさに「おや?」を楽しむスポーツの見方になってますよね。だから、私が言うのはなんか変ですが、もっと自信を持っていいんじゃないかと。
フモ じゃあ売れますかね、コレ。版元さんは目標3万部って夢みたいなこと言ってるんですけど。これぜひ書いておいて欲しいんですけど、興味を持って頂いてもお近くの本屋にはない可能性が高いんです。そんなに刷ってない! 都市部の大規模書店には置いてありますけど、テレビ東京が映らないような地域の方は……ぜひお求めの際はamazonでご購入いただけると確実かと。ネット購入が嫌だという方なら、本の裏側にある出版社名(ぱる出版)とISBNコード(978-4-8272-0719-4)をお伝えいただけると、簡単にご注文いただけますので。でも、amazonの順位の落ち具合がハンパじゃないんですよ。注文初日は10位台だったんですけど、そこからはもう急降下で。僕のブログの読者で買うつもりの方はもう注文いただいていると思うので、新たなファン層を獲得しないと。
─── コラムの普段のアクセス数はどれくらいあるんですか?
フモ だいたい、ユニークユーザーが1日1万人くらいで、PVで月100万くらいですね。だから版元さんも、1万人見てるなら1万部売れるんじゃないかと打算したと思うんですけど、世の中そんなに甘くなかった。問屋は卸してるんだけど、客は買ってくれないという(笑)
【「参加して共有する」っていうのがスポーツの楽しさ】
─── 五輪の本にしては6月発売って早いなと思ったんですけど。
フモ 早いんですよ! もう早すぎて困るんです。
─── 普段のコラムでは“後追い”のフモフモさんが、今回は「オリンピックを楽しむための観戦術」という“先駆け”のコラムを書くっていうのは、勝手が違いましたか?
フモ そうですね。普段は待ちの姿勢というか、僕のやってることは基本的にスポーツを見てのただの感想文。それを「おもしろいオッサンがおもしろいこと言ってる」と共有してもらって、「オレもそう思ってたんだよ」とか「オレは違うよ」と気にかけてくれているんだと思います。僕の中で「ジョイン&シェア」と言ってるんですけど、「参加して共有する」というのがスポーツ観戦の楽しさですよね。誰かと一緒に見て、酒でも飲みながら盛り上がっている時が一番面白い。だから、今回みたいにまだ何も始まっていないことに対して何か書けって言われると、何の感想もわいていないので、どうしていいかわからなかったです。
─── 最終的に49本のコラムが収められています。プラス、ブログでも泣く泣く編集からカットされたという幻の一本がアップされていましたが、50本のコラムを書くっていうのは最初から決めていたんですか?
フモ はい。「5(五)0(輪)、これはいいダジャレだ!」と。
─── 柔道・中村兼三コーチの爆音コーチングにかけたあの贅沢なページ数! さすがフモフモさん、無駄に贅沢な紙面使いしてるなぁと正直思いました。
フモ 僕は無駄とは思ってないんですけど(苦笑)。まぁ、そこはみっちり書きました。柔道は開会式の翌日から早速始まりますので、中村コーチの絶叫に関しては、みんなまだ気持ちがホットな状態で聞くことができる筈でオススメです。
─── サッカーなどの人気競技以上に、五輪ならではの競技や種目にスポットを当てているのは、ノウハウ本としての意識から?
フモ サッカーはW杯の方が大きい大会なので、せっかくだったら五輪こそが最大の大会である、という競技を楽しめれば、空き時間もなく楽しめるかなぁと。あと、コレは僕の個人的な弱気なんですけど、サッカーとかあんまり大きいところに勝負に行くと全く話にならないというか。
─── でも、フモフモコラムではサッカーや野球といったメジャースポーツの記事も多いじゃないですか。
フモ あれは、僕自身が楽しんでいる「感想文」の要素があるからできているだけで、この本の場合は「見どころ」を紹介する体裁の本じゃないですか。いまさらサッカーの見どころなんて、語れないですよね。それに、色んな競技の豆知識みたいなネタをいれても良かったんですが、それは他に出る五輪関連本で散々語られるだろうと。他では載ってないことだけを書こう、として臨んだ結果、あとがきにも書きましたけど「企画大失敗!」みたいな(笑)
【オリンピック期間中の素子はつれない】
─── 先ほども挙げた「中村コーチの爆音コーチング」や「地上最強の乙女・吉田沙保里さんの婚活バトル」といった、スポーツの端の端だけど面白いエピソードは、スポーツの楽しみ方として私自身共感出来る部分でした。
フモ 今って自己啓発ブームで、スポーツ選手は目標と夢を追いかけて自己実現する見本、憧れの対象みたいになってるじゃないですか。
─── 長谷部、長友をはじめアスリートの自己啓発本も多いですね。
フモ でも、僕はその図式をあまり好ましく思っていなくて。そんなこと考えずにもっと気楽に楽しもうよ、というスタンスなので。スポーツ観戦でもちゃんと応援しないと怒る人がいますが、もっと気楽でいいよねって。敢えて「ノウハウ」本と言うならば、ビール飲みながら気楽に見てる人間が気楽にココを注目して見ています、というポイントがこの本では紹介されていますね。
─── いや、でも第一章の解説者への注目方法や民放各局の放映権の割当なんかは、本当に観戦のノウハウになっていると思いました。
フモ まさしくその通りで。
─── 様々な競技・選手を取り上げていますが、その中でも特にフモフモ編集長が気にかけているのは?
フモ 今回だと、女子バレーと卓球女子のチームですね。僕、木村沙織サンと福原愛ちゃんが好きなんですが……「愛ちゃん」なんてよそよそしいこと言っちゃった、「愛」が好きなんで。その2人が3回目のオリンピックで年齢的にも20代の中盤に入ってきて、そろそろかな…と思っているんです。メンバー的にもメダルを取るなら今回かなぁと思っているので、期待してますね。
─── 読んで意外だったのが、「木村沙織」「福原愛」に並ぶフモフモコラムのキラーコンテンツ「大林素子」について記述がなかったことなんですが。
フモ 素子はバレーとなると真面目なので、オリンピック期間中の素子はつれないと思うんですよ。
─── あとわからなかったのが、各コラムの見出しに<金><銀><銅>のいづれかのマークがあるんですが、これは何ですか? フモフモさんの手応え?
フモ それは僕が入れたのではなく、編集者が面白いと思ったものに<金><銀><銅>と勝手に入れたんですよ。
─── じゃあ、編集者目線でのオススメ! そんなのわかんないですよ。どこにも説明ないですよね。順番もランダムだし。
フモ 説明してないですね。あと「このコラムオススメだったのに銅かよ!」という若干のショックもあります。
─── 全部<金>じゃないのかよ、みたいのは?
フモ いやいやいや、全部面白いとか期待しないでください。<金>なんて少なくていいんです。アルフィーのアルバムだって、本当にグッとくるいい曲は一曲ずつくらいしか入ってないんですから。
(後編に続く)
(オグマナオト)