最初、ロンドンの地下鉄は1863年にパティントンとファリンドン間で営業を始めた。その5年後にサウスケンジントンとウェストミンスターを結ぶ路線が設けられ、1884年に両路線は市内を周回するように走るサークル線の一部に接続した。車両は蒸気機関により牽引されたため、トンネル上部には煙を排出するための換気口が設けられていた。
その世界初の地下鉄開業から約150年を迎えた現在、ロンドンの市内交通網は大きな転換期を迎えている。その目玉が中心部の地下を横断するように建設中の「クロスレール」と呼ばれる新交通システムだ。
郊外と都心を結ぶ路線と地下鉄の相互乗り入れが進んでいる日本と異なり、ロンドンの場合、郊外から市内中心部へ訪れるためには各ターミナル駅で降車して、地下鉄へ乗り継がねばならない。しかし、クロスレールが開通すれば、郊外からの列車はターミナル駅を終点とすることなくロンドン中心部の地下を通り、再び郊外へ出る直通運転が可能になる。ロンドン交通局によれば、設置予定の駅は38で、その内8駅を新設。メイデンヘッドからヒースロー空港、ターミナル駅であるパディントン、ショッピング街のボンド・ストリートなど市内主要駅を通ってホワイトチャペルで分岐、ビジネス街のカナリー・ワーフからアビーウッドまたはシェンフィールドに達する。ピーク時には1時間当たり7万8000人、年間では2億人の乗降客を見込んでおり、2018年に開業予定だという。
また、ゴンドラを使いテムズ川を渡河する公共交通機関「エミレーツ・エア・ライン」は五輪を目標に開業間近だ。
(加藤亨延)