というのも、かつて梅子には、優しく生真面目で仕事バカで、結婚を意識すると『完全なる結婚』という本を一生懸命読んでしまうほどの堅物の変人医師・松岡敏夫(高橋光臣)という恋人がいたから。また、松岡は梅子の父を医師の先輩として尊敬し、実の父のように慕っていたこと、梅子の父も松岡を気に入っていた経緯もある。
さらに興味深いのは、「朝ドラ」では幼なじみとヒロインが結ばれるケースは稀だということ。「幼なじみへの感情が、ふと気づいたとき、恋に変わる」のは、少女マンガではよくあるパターンだけど、朝ドラでは珍しい。
たとえば、朝ドラでの幼なじみは、『カーネーション』の安岡勘助のように、ヒロインにとって最も近い存在でありつつ、「恋愛対象外」というパターンや、『おひさま』のタケオ、『ウェルかめ』の鈴木一平のように、ヒロインを一方的に思い続け、見守り続けるパターンが多いと思うのだ。
なぜ今回、“幼なじみとの結婚”を描いたのか。岩谷可奈子プロデューサーに聞いた。
「ノブと結ばれるのは最初の段階から決まっていたことですし、理由はありません。あらすじだけを追っている方は『どうして急にノブと?』とおっしゃいますが、松岡先生が出てくるのは6週目からであるのに対し、ノブは第一回から相手役というつもりで私たちは積み重ねてきました。恋愛フラグも立ててきました。言葉にならない微妙な感じなどを観てくださっている方には、二人が結ばれることは違和感がないと思います」