海外から帰国した時、誰もが必ず通る税関。荷物受け取りのターンテーブル周辺で税関職員に連れられた麻薬探知犬がにおいを嗅ぎながら通ったり、入国前の携帯品・別送品申告書を提出する際に「どこから帰られましたか? これで荷物全てですか?」と問われて、特に身に覚えがなくても緊張する人も多いはず。
今後、無駄に緊張しないためにも(?)、税関と麻薬探知犬について知っておこうというわけで、東京税関でお話をうかがってきた。

税関の主な仕事、薬物・銃器・テロ関連物品・知的財産侵害物品などの密輸出入の取り締まり、関税・消費税などの適正な徴収、通関手続きの円滑化と利便性向上の3点だ。一般的には、密輸を取り締まるイメージが強いが、最近はどのようなものが押収される傾向にあるのか? 

「いわゆるコピー商品については、偽ブランド品はもちろんのこと、近年では通販でヒット商品となったものの偽物も多いです。これら知的財産侵害物品は東京税関だけで年間で約35万点に上ります。9割以上は中国から渡ってきます」(東京税関広報広聴室)

一見して区別がつかない偽ブランド品も、見分けるポイントがあるという。しかし、そこを明かしてしまうと今後に影響が出るため教えることはできないそう。麻薬・覚せい剤などの不正薬物の流入も最近は傾向が変わってきている。

「以前はスーツケースなどを加工してプロの運び屋が持ち込む場合が多かったのですが、ここ2~3年は一般旅行客に旅行代を肩代わりするなど持ちかけて頼むケースが目立つようになりました。不正薬物が入っていると知らせないので、依頼された本人は知らず知らずのうちに運び屋に仕立てられます。また親指の第一関節から上くらいの大きさに薬物をビニール包装して、何個も飲み込み体に入れたまま持ち込む場合もあります。運び屋は入国後に排泄してそれらを取り出すため、機内では全く飲食しなかったり、異物を体内に入れているため脂汗をかいている場合があります」(同)

密輸される不正薬物はその国の好みがあるのか、地域で傾向が変わるらしい。日本の場合、運ばれる薬物はダントツで覚せい剤が多いそうだ。
一方で欧米での押収量は大麻やコカインの割合が高いという。その不正薬物摘発の一助となっているのが麻薬探知犬。犬の中でもかなりのエリートだ。

「麻薬探知犬として適性があるのは200頭のうち1頭の割合。4カ月の訓練期間に、その適性を見極めます。日本全体では約130頭が仕事に就いており、東京税関には約40頭います。犬種はジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、フラットコーテッド・レトリバーの4種類。適性を満たせばどの犬種でも良いですが、倉庫などの高さや大きな荷物にあたっても怪我をしないといった対応が必要なため、20kg以上の犬が好ましいです。旅客に対応する犬は、シェパードだと怖がる人もいますので、ラブラドールなどを採用しています。なお、ビーフジャーキーなど持ち込みが制限されている食品などを発見する検疫探知犬は、税関とはまた別の管轄です」(同)

様々なことに昼夜目を光らせねばならない税関職員と犬たち。知らないうちに犯罪と関わってしまうこともあるので、日本への持ち込みで迷った場合は、気軽に相談できる窓口を利用しよう。
(加藤亨延)
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