――松本さんは既に何枚ぐらいネコの写真を撮っていますか?
「8000枚以上です」
――8000枚!?飼っている猫の写真ならすぐに撮れますが、街にいるネコだとまずはネコを見つけるところから始めますよね。どういった街でネコを見つけていますか?
「池袋、雑司が谷、新大久保、西新宿、表参道などなど、よく行く街が何箇所かはあります。中でも表参道といえば日本有数のオシャレな街ですが、ほんの一歩入ったところに、東京のド真ん中とは思えないほどのんびりした空間が広がっていて、ネコがくつろいでるんです」
いずれも全て松本さんが長年かけて、自ら歩いて見つけ出した場所だそうだ。
――街でネコを見つけるポイントを教えてください。
「ネコが好きそうな場所を把握しておくことが大事ですね。例えば、自動車の上とか下とか、箱の中とか、原付のシートの上とか。よ~く見ると、自動販売機の上や木の上にいることもあります」
見つけるだけでも、かなりの集中力を要しそうだ。
――松本さんご自身、ネコの写真を撮る時に気を付けていることは何ですか?
「まずは、エサでつらないこと(笑)。エサで引き寄せることは絶対にしません。あとは、顔のアップの写真だけでなく、景色を入れて撮ること。まわりの様子が分かると、猫がどんなところで暮らしているのかも想像できます。足音をたてずに、ちょっとずつ近づくことも大事ですね」
他にも、ネコの気持ちになって、ネコが1日をいかに過ごしているかという、「ネコの日常」を知っておくことも大事だそうで、「自分がネコに合わせる気持ちで接している」という。
「なるべく自然体でかつ集中して撮影するのも大事です。自分でも良いと思う写真は、狙って撮ったものより偶然に撮れることが多いです。あと、『去るネコは追わず』といいまして、逃げるネコや、その場を立ち去るネコは追いません」
ネコについて話し始めると止まらなくなる松本さん。ここまでネコが好きな松本さんとはどんな人なのか、聞いてみた。
――松本さんは、当然、昔からネコが好きだったんですよね?
「いえ、元々はネコにはあまり興味はなかったんです」
――ええーー!?
「今はネコの写真をたくさん撮っていますが、最初からネコの写真を撮ろうとしていたわけではないんです。街の写真などの、色々な被写体を撮っている中で、たまたま家の近所にいたネコを撮影したのをきっかけにネコの魅力にとりつかれるようになり、ネコの写真を撮るようになりました。」
そもそも、松本さんが写真を撮るようになったきっかけは、90年代後半に女性の写真家がブームになった頃、HIROMIXさんがコンパクトカメラで日常の写真を撮っているのを見て、自分でも撮りたいと思って写真を撮り始めたのが最初だったそうだ。ところが、一度、ネコにハマってしまうとそこから抜けられなくなり、気がついたらネコの日常を追うように。現在でも、週に1~2日のペースでネコの写真を撮り続けている」
「中にはフォトジェニックな顔のネコもいて、イケメンならぬ、”イケ面”のネコを見つけると嬉しいですね。ちなみに、どのネコも好きだけど、とりわけ、三毛猫が気になります」
撮った写真はどんどん増えていくばかり。そこで松本さんは、2011年より写真をフリーペーパー化して「ネコメンタリー」と題して発行。渋谷パルコ「Only Free Paper」などで配布していたところ、あれよあれよと口コミで広まって女性の間で人気に。
――今後、ネコの写真を撮りに行きたい場所はありますか?
「広島県の尾道市にある『猫の細道』です。ネコが好きな人にとっての憧れの場所になってまして、良い出逢いがあるといいな~と思ってます」
ネコの日常を追って、街に繰り出している松本さん。そんなネコ好きな松本さんだが…
――ご自宅でネコは飼っていますか?
「飼ってません。飼っちゃうと、そのネコに一途になっちゃうんで(笑)」
ネコ好きならではのこだわりといえよう。最後に、ネコが大好きな松本さんに、気になるアノことを聞いてみた。
――犬は好きですか?
「苦手です(苦笑)」
犬は苦手とは!
理由は、子どもの頃に通学路に犬がいて、吠えられていたからだそうだ。まさに、松本さんはネコ一筋なのであった。(やきそばかおる)
「ネコメンタリー」(松本光央さんのサイト)
http://nekomentary.tumblr.com/
「ネコメンタリー」(宝島社)2013年1月26日発売
『ネコメンタリー』(宝島社)