OUIGOでは車内改札を無くした代わりに(欧州の場合、長距離路線は駅に改札口が無いので車内で検札する)発車30分前に到着し駅で改札を受けるシステムだ(乗車は5分前まで)。欧州で長距離路線に乗る時は不測事態に備えて発車時間に余裕を見て駅へ向かうことが多いので、この点では通常のTGVに乗る場合とあまり変わらない。
OUIGOは従来のTGVにあった1等車と食堂車を無くして、全て2等車にすることで座席数を2割増やした。車両は総2階建てのものを使っている。シートピッチも通常の2等車とほぼ変わらず狭い感じはない。記者の座席があった車両の上階は12列×4席の約48席(一部は大型荷物置き場になっている)あり、パリ始発便(11時00分)で埋まっていたのは8席のみ。全く乗客がいない車両もあった。ただし記者が座った場所は2ユーロ(約240円)追加の座席に電源が備え付けられた車両だったので、電源が無い座席よりも人数が少なかったということもある。
発車してしばらくすると車内アナウンスが入り、客室乗務員全員の名前が読み上げられた。通常のTGVの場合、車掌のアナウンスは入るものの、このような表現では無くOUIGOらしさが表れている。
OUIGOには1ユーロ(約120円)追加して携帯にSMSで当日の乗車ホームなどの情報が届くサービスがある。しかし同じ内容のものは登録したメールアドレスにEメールでも届くので、スマートフォンを使っている人は、このサービスは必要ない。当日リヨンからの復路は列車が10分ほど遅れたが、この時もEメールで逐次案内が届いた。
都市間を移動する手段としてOUIGOの使いやすさはどうなのか。じつは今回、LCCの特徴でもある「発着場所が町の中心部から遠い不便さ」を体感するため郊外の駅を使用するパリ・リヨン間を乗車した。
パリの発着駅であるマルヌ・ラ・バレ駅はパリ市内からRER・A線で約35分、片道7.3ユーロ(約870円)かかる。リヨンの発着駅サンテグジュペリ空港駅はリヨン市内までトラムで約30分、片道15ユーロ(約1800円)必要だ。OUIGOを最安値10ユーロ(約1200円)で購入したとしても、パリ・リヨン間の場合、市内アクセスのための交通費が片道で約1時間、22.3ユーロ(約2700円)余計にかかることになる。
さらにパリのRER各線はRER(Reseau Express Regional:地域急行鉄道網 ※ReseauとReseauの始めのeは、eの上にアポストロフィ)という名前に似合わず大幅な遅れやストライキが頻発に起こる路線なので、時間に余裕を持って向かわねばならない。マルセイユやモンペリエの場合は市内駅を使うので問題無いが、パリやリヨンでOUIGOを使う場合は、このような点を考えつつ通常TGVの最安値と比べながら選んだ方がいいだろう。
このように甲乙あるものの、選択肢が増えるということは利用者にとって利便性が増すということだ。現時点での便数は少なくまだダイヤの面で通常のTGVの代わりになるとは言えないが、今後同サービスがフランスそして欧州でどのように発展していくのか注目したい。
(加藤亨延)