仕事に追われる毎日の中にあって、つかの間の息抜きができるランチを楽しみにしているという会社員も多いはず。海外の勤め人はどのようなスタイルでランチを取っているのだろうか。
そこでフランスでのランチ事情を現地サラリーマンたちに聞いてみた。

まず食についての福利厚生で仏企業には2つタイプがあるという。1つは社内に社員食堂を設けている会社。もう1つは社員食堂を持たず、社外での食事や食料品の購入に使える全国共通の食事用金券「チケ・レストラン(Ticket Restaurant)」を社員に配布している会社だ。じつはこの食券制度、フランスではかなりポピュラーなのだ。

「チケ・レストランは各人の就業日数により1ヶ月に渡される枚数が計算されます。
額面の半分を会社が負担し残り半分は給料から引かれます。食事券の平均額面は約8ユーロ(約1000円)。これは一般的なレストランで日替わりランチを注文した時のおおよその値段です。ただし都市部は物価が高いので、その金額で収まることは少なく(もちろんパン屋でサンドイッチなどを買う場合は安いですが)それにいくらか自分の財布から足してランチ代にします」

日本の企業でも同じようなシステムを採っているところもあるが、日本と異なる点はフランスの場合、この食券を使えるレストランがかなり多いということ。大抵の店は軒先に「チケ・レストラン使えます」という印が貼ってある。そのため選択肢がとても広い。


ちなみにフランスのレストランは庶民的な場所でもメニューは「前菜」「主菜」「デザート」と3分類されている。全てを注文すると食事は前菜から順に運ばれてくるので時間がかかる。また金額やお腹の空き具合によって食べたい量も変わる。よってその時の気分や時間、予算で「前菜と主菜」「主菜とデザート」もしくは「主菜のみ」と注文を調整する。日本と同じように多くのレストランはランチタイムに安めのメニューを提供している。

仏サラリーマンのランチの特徴はチケ・レストランだけではない。
フランス人にとってランチには大事な役目があった。

日本のサラリーマンにとってランチ以上に(善し悪しはともかく)大切な食事イベントと言えば、仕事が終わってから会社で行く一杯。しかしフランスでは、仕事が終わった後のプライベートの時間は会社に干渉されるべきものではないという考え方があり、例えお酒を通して社内のコミュニケーションを図る目的があっても、会社で飲みに行くという習慣は無い(もちろん支店や営業所の特別な記念や祝い事で軽いパーティーのように仕事でグラス1杯くらいを皆で傾けるということはあるが、そのようなイベントは木曜夜に開かれ金曜夜は家族などプライベートに充てられることが多い)。それではフランス人はどのように「職場飲み会」を代替しているのか。そこでランチが登場するそうだ。

「フランスでは同僚とランチタイムを共有することはとても大切なことです。
ランチを通して日々どのような人と仕事をしているのかお互いを知る機会になりますし、それは各人のコンディションを上げて職場のチームワークを強くします」

「職場での飲み」がないフランス人にとって、ランチは日本で言う「飲みニケーション」の役割も果たしていたのだ。
(加藤亨延)