春になると、不思議なことに、不審者情報が増えてくるもの。
子どもの通う学校などから「不審者情報」が入るたび、「これってホントに不審者だったのだろうか」と、ふと考えてしまうことはないだろうか。


もちろん何か起こってしまってからでは遅いだけに、十分な警戒は必要だが、たとえば「知らないおじさんに声をかけられた」のが、実は近所の人の挨拶だったり、道を尋ねようとする人だったり、単に「見た目がなんとなく怪しい」だったりするケースは、けっこうありそうな気もする。
実際、地方の警察署別で発表されている「声かけ事案」一覧などを見ると、「『おはよう』と言われた」「『よう』と声をかけられた」なんてものを目にすることもある。
ときには、自分や身内などの何気ない行為が、そうした「声かけ事案」としてとられる可能性だって、絶対にないわけではない。

いったいどういうケースが、「不審者」とみなされ、「声かけ事案」に該当するのだろうか。
都内の警察の防犯担当者に聞いてみた。

「通報があった場合、道を尋ねただけの人や、挨拶しただけの人の可能性もありますので、そのあたりを詳細に確認します。『声かけ事案』か否かの判断として、まず聞くのは、体を触られたり、腕をつかまれたりしたかどうかということや、車に乗せようとしたり、つきまとわれたりしたか、具体的な声かけがあったかどうかなどですね」

単なる挨拶ではなく、「具体的な声かけ」というと、どんなものなのか。
「単に『ねえねえ』などではなく、卑猥な言葉を言ったり、『こっちにおいで』『○○をあげる』などと誘ったり、どこに住んでいるか聞いてきたり、『キミ、可愛いね』と言ったりするケースが挙げられます」
「キミ、かわうぃ~ね~」なんてギャグのつもりで言っても、見ず知らずの女性や子どもに対してでは、「声かけ事案」に該当する可能性があるので、注意が必要だ。
というか、そもそも見ず知らずの女性や子どもに使う機会って、まずないだろうけど。

ちなみに、子どもが通学路などで何か怖い思いをしたとき、学校に伝えるか、警察に通報すべきかなど迷う場合も多いが、それには次のような回答があった。
「何かあってしまってからでは遅いので、少しでも危険を感じたり、怪しいと思ったりしたときには、『子ども110番の家』にすぐ駆けこむか、迷わずすぐに110番通報してください」

不審者に遭遇するリスクの一方で、ささいなことで「不審者」扱いされるリスクも、確かにないわけではない。
よくネット上などで「挨拶しただけで不審者扱いwww」「うかつに子どもに挨拶もできないな」なんて話題が挙がるが、とはいえ、ふと考えてみれば、日頃から「近所のよく知っている間柄」でもない知らない子どもに対して、突然みんな挨拶をしているだろうか。

道を尋ねるときに、どうしても他に誰も通りかからない場所ならともかく、あえて一人歩きしている小学生女子などを選ぶだろうか。
「子供に挨拶もできない時代」と嘆くよりも、「李下に冠を正さず」と考え、怪しまれる行動は慎むのが賢明な判断かもしれない。

いろいろな意味で、「不審者」には十分注意したいものだ。
(田幸和歌子)
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