「バトルトークラジオ・アクセス」「ニュース探究ラジオDig」と続いてきたTBSラジオ・夜のニュース情報番組。この系譜を受け継ぐべく4月から新たに始まったのが「発信型ニュース・プロジェクト 荻上チキ Session-22」だ。
タイトル通り、この番組でメインパーソナリティを務めるのが「朝まで生テレビ」などでもおなじみの若手論客・評論家の荻上チキ。新番組の狙いを聞きました。


《片山さつきの大ゲンカ/福島瑞穂の記者会見》
─── 荻上さんは先月まで、「ニュース探究ラジオDig」で曜日パーソナリティでしたが、新番組では月~金・帯の「メインパーソナリティ」に。プレッシャーはなかったですか?

荻上 プレッシャーは、なかったですね。「あぁ、今度は週5日かぁ」と。

─── 軽っ。


荻上 要は、舐めてたんですよね(笑)。始まってみたら、意外と大変だというのに最初の1週間で気付かされるという。座りっぱなしで腰も痛いし。しかも最初の1週間は、ものすごくヒートアップしたネタが続いたんですよ。

─── 「英語の早期教育」「生活保護受給者のギャンブル禁止条例に賛成? 反対?」など、ネット上でも話題のネタが続きました。

荻上 「英語教育」の回は「はてブ」のトップにあがり、「生活保護受給者のギャンブル」の回は自民党の片山さつきさんとNPO・もやいの若手が真剣バトルと。
CM中が一番激しいケンカだったんですけど、そこを放送中に引き出せるようにならないとなと思いました。先日は社民党の福島瑞穂党首を招いて<会見モード>という、リスナーも交えた記者会見型の議論を展開したんですけど、「そんなことやるのはイジメだ!」という意見も来ましたね。そんなこと言う方が逆に失礼じゃないかと思うんですけど。

─── 片山さつき、福島瑞穂、他にも津田大介さんや中川淳一郎さん、藤木TDCさんなど、スタートから濃いゲストが続いています。

荻上 「この番組じゃなかったら絶対にこのカードは実現しなかった」「この番組じゃなければ、この言葉は引き出せなかった」というのを一個でも多くやりたいなぁと思っています。


《「みんなでひとつのニュースを斬っていく」という形式》
─── なぜ自分がメインに起用されたと思いますか? 

荻上 うーーん。
なんででしょうね。わかりません。でも、「メインパーソナリティ」と「曜日別パーソナリティ」、それぞれにいい面・悪い面ってあるんですよね。いい面は、毎日同じ顔が続くので馴染みやすいというのはあるだろうし、その番組のカラーというのがわかりやすくなる。一方で悪い面というか難点は、曜日別パーソナリティのときは1週間かけて、次週のパンチを打つための力を貯めることができた。

─── 予習や取材をした上で臨むことができたと。


荻上 しかもそのパンチっていうのは、「俺は空手家だから空手ルールで」とか、「俺は柔道家だから柔道ルールでお願いします」みたいに、それぞれのパーソナリティの得意なパンチを1週間かけて磨いた上で参加することができたわけですよ。例えば神保哲生さんなら原発やTPP、青木理さんだったら検察や冤罪の問題とか。役割分担が出来ていったわけですよね。

─── でも「毎日」となると、苦手な球やルールでも立ち向かわなきゃいけない状況っていうのがやっぱり出てきますよね?

荻上 そこでクオリティをどう確保するのかっていうのが課題になってくるわけです。来るニュースは選べませんから、「不得意だからコメント力が劣るけど許してください」というわけにはいかない。予習できない場合なんかもあります。
年長の論客と比べても「その時代生きてないからリアリティがわからない」っていう部分もどうしてもでてきます。

─── そこが今日一番荻上さんに聞きたかったことで、帯番組で、いつ・どうやってインプットをするんだろう? と。

荻上 ひとつは、同じニュースを扱うにしても、この番組ならではの切り口や角度を提示することですよね。それと、この番組では「リスナー参加感」をどのニュース番組よりも用意したいと考えているので、「みんなでひとつのニュースを斬っていく」という形式にする。そんな風にいろんな工夫をしながら、デメリットの部分を一生懸命埋めている、という感じですね。

─── ということは、足りない部分はあっても、切り口や打ち出し方でカバーしていこう、と?

荻上 それもあるんですけど、そもそも北朝鮮問題のように、世界の誰もよくわかってないような、「予習」そのものができない分野もあったりするわけです。
そうした時っていうのはやっぱり倫理観や社会観をベースに「自分からはどう見えるのか」を語ることで議論をすることになります。でもそれも、最低限の予習をしてなんぼ、の部分はあるので、短い時間の中でもなるだけコンパクトに情報収集をするっていうのを心がけてはいますけど。

─── 具体的にはどんな風に?

荻上 一週間ほどの猶予があるなら、書籍を10冊くらい買って、テーマによっては政府などが出している「白書」とかを読み込んだり、論文に目を通したりします。

─── 自著(『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』)の中でも、「白書を読むのが趣味」と書いてありました。

荻上 そうそう、白書が好きなんですよ。僕、記憶力がないんで、人名とかなかなか覚えられないんですけど、数字はけっこう残るんですよね。でも、デイリーだと、翌日の放送までの24時間というタイムリミットの中で本10冊読むのは無理。だから、専門家がゲストとして来るんだから、深い部分は相手から聞き出すという前提で、普段から色々な分野を最低限チェックをして、論点や土地勘を自分なりに作ると。それと、普段からいろんな本は読んでいるので、引っかかりどころっていうのはもともと準備しておく、ということでしょうね。


《「荻上チキ」はみんなで育てていく評論家》
荻上 インプット・アウトプットに関して言うと、この番組では、毎日のニュースをカウントダウンで解説する「Daily News Session」というパートと、ひとつのニュースを深く掘り下げる「Main Session」のパートがあるんです。で、「Main」でやった話題が翌日の「Daily News」として残っている場合もあるわけですよ。そういうときは、昨日までよくわかんなかった話題でも、「昨日議論した通りですね(キリッ」みたいな感じで(笑)、1時間の議論を1分にまとめたり。この番組自体がインプットの場になってるんだな、というのを痛感します。

─── おぉ。番組の中で吸収してしまおうと。

荻上 テレビとか新聞って純然たる「アウトプット」の場というイメージで、正直、出れば出るほど摩耗するんですよ。徒労感が残ることもあるし、短い時間だから「アレも言えなかったコレも…」とモヤモヤが残る場合もあるんですけど、ラジオって「インプットしながらアウトプットする」ということが起こるんですね。番組を続ければ続けるほど勉強できる。番組もパーソナリティも、みんなで育てていくんだって思ってくれるとありがたいです。

─── 育成ゲームみたいに。

荻上 そうそう。「荻上チキの育ゲー」みたいに思ってくれれば嬉しいなぁという、甘えた感情を受け入れてもらえれば(笑)。でも僕だけでなくて、「これを取り上げろ」とか「これを取材しろ」とか言われるとメディアって結構、目を向け耳を傾けるものですよ。

─── リスナーの協力も必要だ、と。ちなみに、この番組のコンセプトが、「知る→わかる→動かす」となっていますが、番組を聴いていると「動かす」の比重というか、意識が強い印象を受けます。リスナーを動かすために必要なことや意識していることは何かありますか?

荻上 今のところまだ、まだまだ「動かす」感はそれほど出ていないのかなって思うんですよね。今後はこの番組発で、例えば法律が通ったリだとか、条例ができたりとか、企業に募金が集まったリだとか。あと、やりたいと思っているのが、みんなで、本を読んでみたいんですよ。

─── 読書会?

荻上 「ザ・シネマハスラー」みたいに、映画を指定して、みんなで観てきて批評とかをワイワイ語る、みたいな番組ってあるじゃないですか。僕は、読書会っていうのが好きなので何かそういったミッションを共有したり、ただ聴くんじゃなくて、「自分はこう感じました」みたいなフィードバックが得られるような形を作っていきたいなと思っていますけどね。

─── より「リスナーの参加感」を打ち出していくと。

荻上 この間は「SOSモード」ということでブラック企業をテーマに、実際の労働相談を番組を通じて行ったりしました。問題解決につながる番組であることを目指せればと。「動かす」というためには、リスナーが参加して番組に力を与えてもらうことで、結果として「みんなで動かしている」みたいな形が、これからじっくり時間をかけてできていけばいいなぁと考えています。


◆TBSラジオ「発信型ニュース・プロジェクト 荻上チキ Session-22」
(月~金:午後10:00~深夜0:55 ※金曜日のみ11:55まで)

(後編へ続く)
(オグマナオト)