わはは。もう凄いでやんす。

「メッタ斬り!」は、文学界毒舌漫才コンビ名。ライターであり素晴らしい海外文学を紹介する豊崎由美と、SF翻訳家かつSF書評家かつSFアンソロジストであるSFモノ大森望。
文学賞&選考委員をメッタ斬りする二人の話をわははと笑いながら読んでいると、文学賞地図が脳内にできてしまうミラクルな本が『文学賞メッタ斬り!』。芥川賞&直木賞の選考委員(大御所)をディスり、毒舌をふりまき、こきおろし、旧弊さに辟易としていた文学ファンから喝采を浴び、一躍人気者に。
その二人が今回メッタ斬ったのが、村上春樹のベストセラー『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
で、また、これが、凄い毒舌&メッタ斬りっぷりでありました。

まず、ふたりのスタンスが。
豊崎:今回、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』には、これまでにないくらい失望させられました。読む前と読んだあとでは、自分の中の村上春樹観が変わったくらいの衝撃的ながっかり感。

大森:部品はみんな村上春樹なんだけど、なんにも面白くない。「村上春樹って、いったいなにが面白かったんだっけ?」と。

はっ、完全否定であります!
ニュースでも流れた発売解禁イベントを、しっかり“版元肝煎りのイベントがありました”と紹介し、その様子をリポート、「ボージョレ・ヌーボーか!」とツッコんでから、物語のさわりを紹介。

その後はネタばれ全開で、もう次々と罵倒の嵐が繰り出されます。
とはいえ、もちろん話芸としての完成度高く、下品な悪口を垂れ流してるのではなく、笑える下品な毒舌になっているのです。
メッタ斬りの語り(たとえば『ラジカントロプス2.0文学賞メッタ斬り!SP 第148回結果編』(2013年1月21日OA))を聞いていれば、ふたりの話し声がよみがえってきて、爆笑度もアップでしょう。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を夢中で読んだぼくでも(参照:最速レビュー。村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に驚いた)メッタ斬られてるのがおもしろい、という不思議な読後感。
「大人気だから読んだけど、ぜんぜんつまんなかったっ!」「あんなに人気になってわーわー言われてるの解せないッ!」「もう読む気もないけどなんかシャクだ」って人は、ぜひ『村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」メッタ斬り!』を読んで、溜飲を下げるといいんじゃないかなー。


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