英国人がフランス人を侮辱する時に「フロッグ」という言葉を使う。フロッグとはカエルのこと。
フランスではカエルを食べる食文化があり、そのことを軽蔑しての悪口だ(一方でフランス人は、例えば以前シラク元大統領が「料理がまずい国の人間は信用できない」と発言したみたいに、英国料理が持つイメージを理由に悪く言ったりもする)。

日本でフランス料理といえば「高級で洗練されたもの」という印象が強い。もちろんそれは一部では間違っていないが、食材を取り上げるとカエルに代表されるように、日本人から見たら「ええっ!! 」と思うものも多い。そんな変わりダネのフレンチ食材をご紹介しよう。

肉畜は牛肉や豚肉と並んで羊肉がポピュラー。どこのレストランへ行っても主菜のうちの1品に必ず載っている。これら3種類に比べれば頻度は落ちるが、ウサギ肉もよく使われる食材の1つ。馬肉も一部で食べられる。

今年1月、欧州で牛肉使用と表示された食品に馬肉が混入していた事件が起きたが、フランスでは馬肉を食べる文化があるので(事件が発覚した英国やアイルランドでは食べない)、逆に馬肉が注目されその売り上げが伸びたという小話もあった。秋以降のシーズンは鹿やイノシシなど、ジビエ(野生の鳥獣肉)の季節になりメニューに加えるレストランもある。

調理法も焼いたり煮たりする他に「タルタル」と呼ばれる粗くみじん切りした生の牛肉を薬味で味付けて食べる方法もある。

以前コネタでも紹介したように、ハンバーグも焼き方を聞かれ「しっかり焼いて」と言わなければ半生で出てくる。
また内蔵もよく使われ、アンドゥイエットという豚の小腸に内蔵を詰め込んだソーセージも愛好者は多い(ただし内臓系の料理はクセがあるので、完全にハマる人と全く受け付けない人に分かれやすい)。これら食材は日本で馴染みのあるものもあるし、まだ口に運べるレベルだと思う。

次は鳥肉。ニワトリと同じくらい使われるのがフォアグラで有名な鴨。その鴨肉で変わりダネなのが「窒息鴨」と呼ばれるもの。なんだか恐ろしい名前だけれど、これは鴨の首の後部に針を刺し、仮死状態で食肉処理することで血液を肉全体に巡らせ(通常の食肉処理は血抜き作業が行われる)、肉の鉄分の風味を強くしたもの。

ちなみに以前、フランス人の知人に「色々な殺し方を考えるね」と言ったらネガティブに受け取られたのか「日本の寿司屋で実演されるマグロの解体や活き造りの方が気持ち悪い」と反論されてしまった(ただし知人は刺身と寿司は大好き)。その他だとハトや、ジビエの季節にはキジや雷鳥(!)も食べられる。

フランスの日常生活と切っても切れないチーズは牛の他にヤギからも作られる。しかし「フロッグ」のフランスはここで、ひとひねり入る。牛乳から作られるミモレットという種類のチーズは熟成にダニを使うのだ(もちろん部屋にいるダニとは別の種類のダニ)。食べる時は表面にあるダニの層は除くが、慣れないと気持ち良くはない。
ちなみにフランスのお隣、イタリアのサルディーニャ島はさらに上を行き、カースマルツというウジ虫を使って熟成したチーズがある。食べる時も生きたウジ虫ごとぱくり! それに比べればずいぶんおとなしめ。

ミモレットから難易度を上げたい人は、最初に話題に出したカエル(唐揚げなどにして食べる)やご存知エスカルゴが待つ。これらも慣れないと姿に抵抗感はあるが、カエルは鶏肉のようで淡白、エスカルゴは見た目通りツブ貝みたいでおいしい。

しかし「この程度では生温い!」という人は南仏ニースへどうぞ。ここにあるミシュラン1つ星レストラン「アフロディット」では、海外の昆虫食に触発されたシェフがバッタやイモムシなどを料理に加えアクセントを出している。フレンチとゲテモノの完全なマリアージュを楽しみたい人には最適だ。
(加藤亨延)
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