韓国で焼肉料理と言えば、鉄板の上で豪快に焼いたり切ったりしながら食べるサムギョプサル(豚の三枚肉)やカルビ(骨付き肉)などが一般的。分厚い牛肉の塊を事前に調理し提供するステーキは、日本と同様に韓国でも西洋料理のカテゴリーとなり、ステーキレストランやビュッフェなどで食べるものとなる。


ところで、これとは別に1960年~80年ごろには、「ステーキ(韓国語の発音でステイク)」という、韓国ならではのB級焼肉料理が食べられていたという。この懐かしのステーキのお店が今でも残るお店が、淑大入口駅近くの「ステーキ通り」に集まっている。どんなものか、さっそく訪れてみた。

ステーキ通りは、かつて米軍基地があった広大な敷地のすぐ横にある。ステーキ通りといっても現在は、「ステイク」の看板を掲げるお店が数軒残るだけで、雑多な韓国料理店が並んでいる。

1968年から続く老舗店のひとつ、「トルボ」にて「モドゥム(盛り合わせ)ステイク」を注文する。ステーキなのに盛り合わせとは? まず出てきたのは、サムギョプサルを焼くのと同じ鉄板。店員のおばさんは、そこにアルミホイルを敷き、大きなバターをのせて溶かし始めた。

その上にぶちまけられたのは、牛肉の塊と、ジャガイモやタマネギなどの野菜、そしてソーセージ、ベーコンといった加工肉。肉や野菜をはさみで適当な大きさに切りながら焼き、バーベキューソースとニンニクパウダーをかけて味を馴染ませたら完成だ。これをマスタードベースのソースにつけていただく。

見た目からも想像がつくように、肉の油とバターにまみれの、まさに肉祭りといったパワフルなお味。
柔らかい牛肉のあいまに現れる、加工肉のジャンクなテイストがアクセントになっている。ビールのつまみに良さそうだし、子供たちも喜びそうだ。

ステーキ通りが賑やかだった頃の話を店主に聞いてみると、当時は、牛肉はもちろんソーセージやベーコンも、なかなかお目にかかれない高級食材。それらをたっぷり食べられるということで、この通りを発祥として、各地に韓国ステーキ店が生まれたのだそう。

お店は家族連れで賑わい、立地上、西洋人のお客も多かったとか。80年代を過ぎるとブームは去り、この通りには現在、数件が残るだけだという。

近年は、懐かしの味・未体験の味を求めてやってくる人が中心。当時ステーキ店に連れられていた子供たちが大人になり、ある時は自分の子供を連れ、思い出の味を楽しみに来るという。

なお、これらのステーキ店ではステーキの他、ソーセージやベーコン、そしてキムチやラーメンが入ったプデチゲも販売されており、こちらを目当てに訪れる人も多いとか。

韓国旅行の際は、王道の焼肉を食べるのもいいが、ディープに攻めるなら、懐かしの韓国ステーキに一度は挑戦してみてもいいだろう。
(清水2000)
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