サイトを見ると、「枚方市民にしか分からん雑談ネタをもりもりと」お届けする地域情報サイトと書いてある。記事を読むと、枚方市民ではない私も次々とさかのぼって読みたくなるような、いや、突っ込みたくなる記事があふれている。例えば、「(ブレイクしそうなアーティストに選ばれた)小南泰葉さんが、枚方にある『アリミツギタークラフト』でオーダーメイドしたアコギを使ってる」というマニアックな情報やら、「こないだ放送されたドラマで中山美穂が『枚方在住の主婦』役だったそうな」など、どこからそんな情報を手に入れたんだろう、それにしても「枚方」というだけでマニアック過ぎるやろ!と突っ込みたくなる具合だ。
中には計算されたようにオチがついてる記事も。同業者として、ただものではない匂いがする。そんな記事を生み出すのは編集長の本田一馬さん。最初は一人で「気になるけど入りにくいお店などを紹介できるサイトがあれば」という思いからブログを始めたのだそうだ。5月には月刊90万ページビューを達成し、月の平均読者数が約10万人以上というから約40万人の市民に対し、4人に1人以上はひらつーファン?! 枚方市だけではなく海外や県外からのアクセスも多く、旧枚方市民や県外ファンからも愛されるサイトに成長しているよう。
それにしてもピックアップするネタが意表をついていて興味深い。
本田さんをはじめ、ひらつースタッフの枚方愛があふれすぎて、その熱い思いを記事にしているのかと思いきや、目線はあくまでも一市民というスタンスで非常に冷静。「地元だから何でも記事にするのではなく、枚方に住んでいる人の興味があることを届けたい」という。「地域のために」と熱くなり過ぎるとひいてしまう読者がいるかもしれないが、「楽しく面白く発信していく」というスタイルが、「なんかおもろいし、気になる」町の情報サイトとしてうまく機能を果たしている。
風疹の予防接種についての枚方市の取り組みといった時事ネタ、ナイフを持つ男が出没しているという注意喚起記事、居抜き物件や町で起こっているイベントなどのお役立ち情報。読者がまるでお店に入ったような気分にひたれる「お店みせて」のコーナーなど、さまざまな地元情報を網羅するひらつー。中でも人気のコーナーは「開店情報」と「閉店情報」だそうだ。「閉店した店の情報はネガティブな情報になるのでは?という声があるかもしれませんが、読者の方から『さみしいな』『以前からファンだった』『ここで、アレ食べた』という思い出の共有が生まれることも。読者のコメントに対し、関係者の方が『長くお店をやってきてよかった』と返信して、交流が生まれることもあります」(本田さん)。「読者の『誰か』にとって、どのお店、どの景色が思い出になるかは分からない。
かと思えば、駅のツバメの巣をクローズアップ(写真あり)し「なんちゅうアクロバティックなツバメなんでしょう。『ここに巣作ったらオモロイんちゃうん』とノリで決めちゃって後悔してるパターンでしょうか。それとも『いつも軒先に作ると思ったら大間違いやで』という人間への反抗心の表れか」とツバメの気持ちを妄想で推し量る記事もある。そして、しっかり駅員さんにも取材して、「知らん間に作ってたとのことです。そらそうか」と落とす。枚方市民の誰かが気になりそうな内容で面白い話。ほかにも、「枚方から『あべのハルカス』が見えてる。と思う」というゆるい記事が、枚方市民の「そうかもな」「私もそう思ってた」というほんわかした繋がりを生み出す。
読むと笑えて元気になり、ゆるさと真面目さがバランスよく融合する。コメントには「さすが編集長、目のつけどころが違う」という内容のものもあり、ひらつーの「ノリ」を読者がしっかり理解しているようだ。
(山下敦子)