これまでのゾンビゲーム(「バイオハザード」、「デッドライジング」、「Left 4 Dead」など)におけるサバイバルは、ゾンビを倒して逃げ延びることだった。脱出口や外部からの救援のアテがあるから、そこまで逃げて、たてこもって、包囲されて、突破してまた逃げてを繰り返す。たいていのゾンビ映画と同じようにシンプルだ。
「State Of Decay」は違う。舞台がオープンワールドなので場面の区切りはない。どこにもいけるけど、どこも危険だ。バリケードで一応の安全を確保した拠点を作れるけれど、ゾンビにあふれた世界から逃げるための脱出口や救援のアテはなかなか見つからない。おとなしく立てこもっていようにも生きていくには食糧や資材や医療品が必要だ。腹が減ればケンカになるし、薬が無ければ病気になる。
物資を持ち帰ることが目的だから、ゾンビを見つけても他のゲームみたいに気軽に撃ったり殴ったりできない。後先考えずに使ったら武器や弾丸が足りなくなるし、銃を使って音を立てたらさらにゾンビが集まってくるからだ。激しい運動をするとスタミナが減るから、たくさん相手をしているうちに息切れしていつかはやられてしまう。だから息を潜めて見つからないように、物資を探して持ち帰る。ただ逃げたり戦うんじゃない。生活していくことが、このゲームのサバイバルだ。
おしよせるゾンビの群れをまとめてぶちのめす爽快感はそこにはない。試されるのは反射神経や立ち回りよりも忍耐力と計画性だ。それって楽しいか? いや、これが楽しい。だって「ウォーキング・デッド」があるからだ。
「ウォーキング・デッド」はゾンビで荒廃したアメリカでのサバイバルを描く連続ドラマ。
そこにはやっぱり爽快感はなくて、厳しい生活が続いていく。だけどそのおかげで、大切に取って置いた弾丸のおかげで命を拾ったときの安堵、すんでのところで逃げ切って避難場所に駆け込んだときのスリル、険悪だった隣人と和解していく感動が際立つ。「ウォーキング・デッド」はゾンビものの新しい楽しさを開発した。
だから「State Of Decay」を楽しむことができる。好きに撃ち殺せないゾンビ、じりじり減っていく物資、好き勝手言う隣人にイライラしても、その向こうにある感動のためにそのストレスさえ楽しむことができる。「State Of Decay」はゾンビ映画の楽しさを味わうゲームではなく、ゾンビドラマの楽しさを味わうゲームだ。
ただ、この「State Of Decay」は日本語版が無い。日本語版の公式ページまではできたものの、配信は取りやめになったしまったからだ。何とかプレイする手段が無いわけではないけれど(「Xbox 海外タグ」などで調べてみてください)、メッセージは全部英語。