いよいよ今週末、7月20日(土)に全国ロードショーが迫った、宮崎駿監督の最新作「風立ちぬ」。エキレビではすでに文筆家の千野帽子さんが、「風立ちぬ」にまつわるブックガイドを書いている。そのあまりの充実ぶりに、レビューのハードルが上げられてしまった気がした。さて、私がこの作品について書くとしたら、どこに注目すればいいのだろうか……。そんなことを考えながら試写会に行くと、会場で配布されたパンフレットに、大塚康生(東映動画時代の宮崎駿の先輩にあたる)が「時代ごとに変わる蒸気機関車とそれを包む風景を描き分けていると聞き、期待大!」と書いているのが目に入った。

宮崎アニメというと、飛行機はじめ空を飛ぶ乗り物がよく活躍するため、とかく“飛翔”などのキーワードで語られがちだ。しかし、実際には飛行機だけでなく、自動車や鉄道などほかの乗り物もたくさん登場する。とくに鉄道は、空間の広がりを表現するため効果的に使われてきた。たとえば、テレビアニメ「アルプスの少女ハイジ」(宮崎は場面設定・画面構成を担当)では、主人公のハイジが叔母に連れられて、アルプスからドイツのフランクフルトまで出るまで、列車を何度も乗り継ぐさまが描かれていた。これだけで十分に、アルプスとフランクフルトの距離がよくわかる。

「風立ちぬ」は、少年時代より飛行機に憧れ、零戦を開発した堀越二郎という実在の人物をモデルにした作品である。けれども、その物語のなかでは、大塚康生が書いていたように、鉄道や駅が結構重要な役割を担っていたりする。そこでこの記事では、劇中に登場する鉄道や、背景となる時代について、いくつかキーワードをあげながら紹介してみたい。鑑賞前のガイド、あるいは鑑賞後のおさらいとして読んでいただければ幸いである。