なんだかモヤモヤする。気分が晴れない。
そんな時は、気分転換に美術館や本屋に行くのだが、美術品を見ても思ったような感動が得られず、本屋へ行っても「これだっ!」と思うような本に出逢えなかった時、私は神社に行く。文字通りの「神頼み」だ。

行きつけの神社は東京都渋谷区の明治神宮だ。若者でごった返す原宿駅前から徒歩1分で到着。お正月には日本一の参拝者数を集める、言わずと知れた神社だ。大きな鳥居をくぐり、緑豊かな参道を歩くだけでも心が落ち着く。木々の間から降り注ぐ木漏れ日を浴びて、ゆっくりと散歩しながら本殿へと向かい、参拝すると、あら不思議! 今までのモヤモヤがスーッとどこかへ消えてしまうのだ。

近年パワースポット巡りというのが話題になっているが、やはり神社は神様を祀っていることもあり、神様のパワーが満ち満ちているのかもしれない。

パワースポットへ行ってみたいけれど神社については詳しくないし、どこに行けばいいかわからないなぁ、とお思いの貴方っ!ご心配召されるな! パワースポット巡りのテキストとして、ありとあらゆる神社をランキング形式で紹介しているのがこちら。芸術新聞社より発売している『ありがたい神社の歩き方、神様の見つけ方』だ。

本書では神社の標高を表した「高さベスト10」や「由緒の古さベスト10」、「参道の長さベスト10」などを紹介しており、変り種だと「“当たる神”ベスト10」や「寅さんがバイをした神社ベスト10」なども紹介している。

本書を刊行するに至った経緯を担当編集者の井口さんに伺ってみた。

「ふだん意識していなくても、神社の世界は思っている以上に、私たちに身近です。ランキングというキーワードで、読者の方がたに、楽しみながらその世界に触れていただきたい、と思いました」

確かに神社は家の近所や通勤途中にもあるが、神社の歴史や参拝方法など、奥が深くて興味深いけれど、なんだか難しそうだ。そもそも、なぜ神社に興味を持ったのか、著者の戸部民夫さんにそのきっかけについて伺ってみた。

「『神社は単に神様を祀る場所(神域)というだけではなく、そこに日本人の精神性を反映する様々な要素が秘められている』ということになります。要するに、それを探ってみたいという興味です。ふだん日本人の生活を支えてきた自然、歴史、文化といったあらゆる要素が混然一体として神社の聖域という不思議空間を形成しているわけで、何気なく参拝しただけでは魅力の実態は分かりにくいものです。そこで、ちょっと視点を変えてじっくり眺めてみると、『神社は、こういう見方をすると、こんな魅力を感じることができますよ、けっこう面白いですよ』というのが分かります」

確かに、本書を見てみると、「美しい社殿ベスト10」や「景観美ベスト10」、「奇祭・珍祭ベスト10」など、ランキングのタイトルを見ただけで心惹かれるようなものばかり。しかしながら、神様を祀る神社に対して、「楽しい」「面白い」といった感覚ってなんだか不謹慎じゃないでしょうか?

「魅力だとか楽しむ、面白がるといった表現はいささか不謹慎な態度のように思えますが、これは日本人の神仏信仰の伝統的な感覚といえます。たとえば、江戸時代の寺社詣でにかこつけた物見遊山などはその典型です。お祭りなどもそうですが、昔から信仰と楽しみ(遊び)は不離一体です」

なるほど。自分だけでは発見できなかった魅力を、本書を元に新たに発見できそうな予感がする。最後に、参拝を楽しむポイントやアドバイスを伺った。


「ある程度、楽しむ目的を持って参拝する場合でしたら、神社の歴史や特色、見どころなどを下調べして出かけるとよいでしょう。たとえば、国宝・重要文化財級の社殿建築が見られる神社は各地にあります。また、四季折々の自然を楽しむならば、庭園のある神社、花や紅葉の季節の名所として知られる神社に出かけるのも一興です。

あとは、お祭りや伝統的な神事が行われる日を選んで参拝する方法もあります。無形民俗文化財に指定されるような神事芸能は、それこそ各地の神社で行われていて案外身近なものです」

本書を読みつつ、近場の神社に出かけてみるもよし、また、自分なりの神社ランキングを作ってみるのも面白いかもしれない。
(薄井恭子/boox)
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