大阪といえば食い倒れの町。その中でも南に位置する泉州は、秋のだんじり祭で知られるだけでなく、美味しい食べ物が多いことでも有名だ。


ちょうど今の季節に旬を迎えるのは、手で裂けるほど柔らかい水なす。そして、ブサイクなちび魚。この魚の名前を、“ガッチョ”、という。

ガッチョ、というと非常に素朴な響きがある。これ、関東ではメゴチと呼ばれる魚である。
見た目はぬるっとした10センチほどの小魚。
丸々太った体がネズミにも見えることから、ネズミゴチとも呼ばれているそうだ。
そんなガッチョの顔は、非常にブサイク。
とはいえ、魚介類にありがちな“怖い”ブサイクさではなく、どこか愛嬌を感じるようなブサ可愛さである。

夏になるとこの魚が大阪湾でよく揚がるのだという。しかしあまりにもよくかかるので、釣りの世界では外道とまでいわれているらしい。
それほど大きくもなく見た目も悪い、この魚を最初に食べようと思った人は勇気ある人物だったに違いない。

外道だのブサイクだのと悪口ばかりだが、ブサイクな魚はクエなどにしても往々にして美味しい。
実はこのガッチョもまた、非常に味が濃く美味しいのだ。

地元・泉州で人気の食べ方は、この魚をサクっと揚げてしまう唐揚げや天ぷら。
ウロコなどはないので、軽く皮を剥いでぱっくりと二つにわけてサックリ揚げる。
揚げ立ては手で持って食べるのが一番美味しい、と地元の人は言う。
真ん中に骨を残して揚げると身と骨、2種類の食感を楽しむこともできるそう。
丁寧にさばくのではなく、その大胆な調理法も庶民的だ。
簡単で美味しいということで、旬の夏にはあちこちの居酒屋にメニューとして登場するそう。まさに泉州の地元の味なのだ。

昔は大阪でも泉州しか知られていなかったこの魚だが、最近は市を飛び出して大阪でちょっとしたブームを起こした。
その人気は飛び火して、関西全域、そして関東へも手を伸ばそうとしている。

泉州といえば、そんながっちょだけでなく、前述の水なすも有名だ。

柔らかく手で裂ける水なすと、あつあつのガッチョ。種別は違えどどちらも泉州夏の味わい。そしてどちらも手でつまんで食べられる、どちらもビールに合うという不思議な共通点のある泉州名物。
現地で食べたほうが美味しいので、夏に大阪観光に来るときはちょっと足を伸ばして泉州まで行ってみてはいかがでしょう。
(のなかなおみ)