2009年に発売された山梨の方言本『キャン・ユー・スピーク甲州弁?』(樹上の家出版)の歴史的大ヒットは、そんな山梨県人の気質を表す典型例といえるだろう。
以前コネタでも紹介したが、同書はいわば甲州弁の教科書。もとい、甲州弁をネタにしたお笑い本。
地元の老舗大型書店・朗月堂書店の年間売り上げランキングでは、2009年に村上春樹著『1Q84』(新潮社)をおさえ1位、2010年には岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社)をおさえ、なんと2年連続1位を獲得。異例の快挙を達成した。
本が売れないといわれる時代に、3万冊近くを販売。読者はほぼ山梨県民、もしくは山梨県出身者に限られるのに、である。「自分の分と東京へ嫁に行った姉ちゃんの分」なんて感じで、1人で2冊以上買った人も多かったようだ。
そんな伝説の本の発売から早4年。まさかの、いや待望の第2弾が登場した。『キャン・ユー・スピーク甲州弁?2』(樹上の家出版)だ。
7月25日に発売されると同時に地元では話題沸騰。
内容は甲州弁辞典や甲州弁検定、英和辞典ならぬ英甲辞典など、前回に負けず劣らず充実の内容。作者の五緒川津平太(ごっちょがわつっぺえた)さんに話を聞いた。
よく再び、こんなにネタを集めましたね?
「長年溜めこんだネタを第1弾で出し切ってしまったので、続編は絶対にないと言っていたのですが、考えていれば少しずつ溜まってくるもので……。何とか1冊分になったので出しました。4年間、ずっとこんな、だっちもないことばかり考えていました(笑)」
“だっちもない”とは甲州弁でくだらない、といった意味。
とはいえ、前作の評判はプレッシャーにもなっていたそうで、
「誰にも注目されず気楽に出せた第1弾の頃を懐かしく思い出します」
と遠い目でポツリ。とくにオビのマンガの評判がよく、「あれが一番よかった」「あれに騙されて買ってしまった」などの声も続出。オビへのプレッシャーも相当なものだったようだ。
ちなみに前回に引き続き、今回も自費出版。
「執筆・デザインから配本・集金まで、印刷と製本以外は全部自分でやっています。
販売は山梨県内の書店にて。県外の人なら、五緒川津平太さんのホームページからも通販可能だ。
最近では、深夜番組でブサイク方言ワースト1になるなど、良くも悪くも知名度を高めつつある甲州弁。五緒川さんいわく、
「この本で甲州弁の魅力を再発見し、山梨県人に自信と勇気を与えられることを願っています。方言を話題に、親子、孫と、世代を超えて家族で盛り上がっていただければと思っています」
今度こそネタは使い切ったそうで、第3弾はないと断言しているが、前回もそういっていたから、よもやの第3弾もあるかも!?
地元愛がことさら強い山梨県人に自信と勇気を与える通称『キャンスピ』シリーズ。第2弾がどこまで伝説的な記録を打ち出すか、今から楽しみにしたい。
(古屋江美子)