東京秋葉原と言えば萌え文化、電気街のイメージばかり、ほかには美味しい飲食店が多かったり、神田明神があったりとか…。

スルーしがちだが、実はアキバには歴史的建造物が残っている。
それはかつて中央線神田〜御茶ノ水間にあった「万世橋駅」だ。レンガづくりのその長細い建物は神田川沿いに伸び、その上には線路があってちゃんと今でも電車が走っている。その建造物が9月14日に商業施設「mAAch ecute(マーチエキュート) 神田万世橋」として生まれ変わって開業した。そこで今回はこの神田万世橋をレポートする。

100年以上前の建造物「万世橋駅」(1912 〜43年)を再利用して飲食店、雑貨店などの11ショップが入っているほか、旧万世橋駅時代のプラットホームを整備し、展望デッキにしているといった工夫が施されている。

また、旧万世橋駅開業時からある「1912階段」がそっくり残されているのも見所のひとつだ。場所は秋葉原駅を降りて、徒歩5分くらいのところ。メイドさんや電気店を横目に見ながら神田川にかかる万世橋に到着。すると、見慣れたレンガづくりの建物の端っこにいつの間にか「mAAch」という赤い字の看板が掲げられ、黒字に白抜きのmAAch文字の下にトンネルのような出入り口がある。

入ってみると、右手に神田川を見下ろせる長いベランダがあり、すぐ横に施設内見取り図のボードが立てられ、天井にはシャンデリアが吊るされていた。左奥には喫茶店があり、土曜日ということもあり、昼間から家族連れのお客さんで賑わっていた。

壁は基本的にコンクリートむき出しで、上部はアーチ型になっており、天井もそれに対応して弓なり状だ。
各店舗内はベランダ窓からの日光で明るく照らされており、健康的な雰囲気に包まれていた。うなぎの寝床のような施設内にもかかわらず店内が明るいのはベリーグッド。ただ、店舗から店舗に移動する際の短いトンネルの天井はちょっと背の高い人には窮屈な気もする。

さらにずっと進んでいくと、緑の鉄骨がむき出しになった天井があったり、ゴツゴツしたコンクリート壁面上にあえて映写して万世橋の歴史を説明するコーナーに出くわした。このへんは施設開発者のこだわりだろう。トイレ施設だけがなめらかな現代風のスペースに作られているのがちょっと違和感があったが…。

行き止まりまで行くとレストラン、順番待ちでなかなか食事にありつけそうになかった。やっぱりオープンしたばかりだし、週末ということで商売繁盛する時期なのだ。仕方なく、一旦外に出た。すると外側にもショップがズラッと並んでおり、こちらでもいろいろ食事、買い物ができるではないか! しかも、正面にはベンチとコンビニがあるから、お金を節約したい人はコンビニで弁当と飲み物買ってベンチに腰を下ろして食事を済ませるのがよかろう。

外から入るノボリ階段がある。これが「1912階段」で、旧万世橋駅開業時からあるものをそのまま利用して展望デッキへとつながっている。
しかし、100年以上経過しているにもかかわらずしっかりしている。昔の日本人たちがつくった建造物は堅牢だ。

外装のレンガもところどころヒビがはいっていたりするが、ちゃんと持ちこたえている。以前紹介した横浜レンガ倉庫の場合と同じく歴史的建造物ってカッコウいいうえに頑丈なんだよなぁ。

展望台には、カフェがあり、そこも行列ができていた。展望台には「まんせいばし」と書かれた表札があって秋葉原の街を背景に通過電車を眺められる。天井も壁面もすべてガラス張りで、見通しは抜群。

なぜか床が天然芝生になっていて、思わず寝っ転がりたくなった。ただ、警備員さんがいて、あまり自由奔放なことはできそうにない雰囲気ではあった。でも、ちょっと狭いスペースという感じで、もう少し広くしてくれれば、伸び伸び寛げるのだが。駅跡施設だからいろいろと制約が多いのだろう。

「万世橋駅サロン」が開発コンセプトというだけあって、無料の読書スペースあり、資料検索スペースあり、各種飲食店ありと、狭いスペースながら盛りだくさんの内容となった「mAAch ecute 神田万世橋」。
アキバにもうひとつ新名所が出来たといっていいだろう。すでに海外の観光客も訪れており、スタートは上々のようだ。見る物、食べ物、買い物がたくさんあるアキバ、ますます足を運ぶ人が増えるだろう。
(羽石竜示)
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