1月某日、そんなお誘いメールが届いた。送り主は『大人養成講座』『大人力検定』などでおなじみの累計200万部コラムニスト・石原壮一郎さん。
向かった先は、東京ミッドタウンで行われた「三重フェア」のオープニングセレモニー。石原さんは「取材」と称し、その場にいあわせた三重県縁のキーパーソンたちに、「伊勢うどん友の会」なる謎の組織を宣伝してまわっていた。
「オグマさん、吉田さんとのツーショット、ぜひ押さえてください」
そう、私の役目はカメラマンだった。
「いやいや、そんな腕もカメラも持ちあわせてませんけど……」というボヤキをする間もなく、石原さんはスルスルっと、セレモニーのスペシャルゲストにして、国民栄誉賞を受賞したばかりだったレスリング金メダリスト吉田沙保里(三重県津市出身)に近づき、「伊勢うどんのやわらかくてしなかやなコシは、吉田さんのレスリングの強さに何か影響を与えたでしょうか?」「あのやわらかいコシ(の麺)を食べてレスリングが強くなったと言っても過言ではないでしょうか?」と質問攻め。そしてうろたえる吉田沙保里の横にスッと並ぶと、すかさず私を呼び寄せた。これだけ近ければ撮影に支障はない。石原さんの、まさに吉田沙保里ばりの高速アタックに呆然としながら、私はシャッターを切った。
そんな調子で石原さんは、その後も鈴木英敬三重県知事をはじめ、三重県の重鎮たちに次から次と近づいては「伊勢うどん友の会」の存在を喧伝してまわっていた。石原さんの伊勢うどん愛と、そのための営業努力を痛感した1日だった。