あまり知られていないが、横浜市では意外に農業が盛ん。なんと小松菜の生産量は全国1,800市町村の中で1位! ほかにもカリフラワー8位、キャベツ10位など、野菜を中心にかなり健闘しているのだ(※平成18年農林水産省野菜生産出荷統計)。
地方は単一作物を生産しているケースが多いが、 都市農業の横浜では多品目を作っているのも特徴。市では、横浜生まれの農産物を横浜ブランドとして認定しているが、指定品目は30にも上るほど。地産地消が進んでおり、市民のニーズに合ったものを作っている。
先ごろ、横浜市が実施したメディアツアーに参加し、実際に農業地区などを訪ねてきた。
まず訪れたのは「折本農業専用地区」。横浜市では、古くから他の自治体などに先がけて農業専用地区を指定するという独自の取り組みを展開しており、農業を後押ししてきたのだという。
同地区があるのは都筑区の港北ニュータウンに接した丘陵地帯。交通量の多い幹線道路をそれて住宅街を少し進むと、急に視界が開けて広々とした畑が出現。市街地と農地のあまりの近さにビックリ! ここではおよそ120戸の農家が小松菜やホウレンソウ、パンジーなどを栽培。
のどかな光景にまるで田舎を旅しているような気分になったが、遠くにみなとみらいのビル群が見えると、ここが横浜であることを実感。
「富士山が見える日もあるし、すごくいいところだよ」
というのは作業中だった農家の方。丹沢山系なども望めるビュースポットゆえ、最近は散策目的で訪れる人も少なくないそうだ。
市内には1,000カ所以上の農産物直売所があり、これも地産地消を後押ししている。その1つ「メルカートきた」へ行ってみると、市内産の野菜や果物、加工品がズラリ! 取材した9月初旬は野菜が少ない時期だったが、それでも40品目以上あった。多いときには60~70品目にもなるという。小松菜やトマトといったポピュラーな食材はもちろん、そうめんかぼちゃや花おくら、バターナッツなどユニークな野菜も豊富で、地元のイタリアンやフレンチレストランのシェフが買い付けにくることも多いそうだ。
横浜には地元の農畜産物を使ったメニューを積極的に提供する店も多く、市内の約80軒が「よこはま地産地消サポート店」として登録されている。東急田園都市線藤が丘駅前にあるイタリアンレストラン「ナチュラーレ・ボーノ」もそのひとつ。市内の提携農家の方から直接仕入れる野菜の中にはスイスチャード、パープルスティックなど珍しい野菜もふんだんに使われ、見るのも食べるのも楽しい。
市民370万人の胃袋があり、農地と市街地が近いゆえに、直売も盛ん。
(古屋江美子)