【もし俺が病原菌になったら】
私は、もうすぐ人類を滅亡させるだろう。
ウィルスは、鳥類感染によって日本からあっという間にイギリスに飛び火。
警戒する声も大きかったがロンドンはオリンピック開催を決断。結果としてそれがパンデミックへと繋がった。感染者数6億を超え、次々と死亡者数が上がりはじめた!
iOSとAndroidでリリースされているゲームだ。
タイトルは『Plague Inc.‐伝染病株式会社‐』
プレイヤーは病原菌になる。目的は人類滅亡。なんという背徳。
不謹慎ともいえるこの伝染病シミュレーション・ゲームは、2012年、iPhone&Androidでリリース。大ヒット。
“世界中で 2 億回以上プレイ”された。
その『Plague Inc.』のiOS版が先日のバージョンアップで日本語化され、あっという間にitunes有料アプリ1位に踊りでた。
 
【日本で感染開始】
ゲームをスタートさせる。
不気味な音楽が流れる。
まず名前をつける。といっても病原菌。いつも使ってる勇者の名をつけるのは憚られる。考えたあげくBaroqueにする。
画面はリアルな世界地図。
「究極の伝染病で人類を絶滅に追い込め!」なんてメッセージがでる。
「伝染病が始まる国をタッチしろ」と言われる。「裕福な国は感染が難しいぞ!」というメッセージも。
日本をタッチ。「Baroqueが日本で感染開始」と表示されて、いよいよスタート。
ゆっくりと感染が拡大し、DNAポイントが溜まっていく。
このポイントを使って自分(伝染病)を進化させる。
まずは「伝染」だ。都市部での感染力を強化するためにげっ歯類による感染を進化させる。
飛行機と船舶による感染で、各国に広めるためには、大気エアゾル粒子を大量発生させたい(そのためには空気感染と水感染を2段階進化させる必要がある)。

【人類滅亡攻略法】
強化するのは伝染・症状・能力の3ジャンル。症状は、「不眠症」「嚢胞」「貧血」「発疹」「咳」「吐き気」の6種が初期段階。
強化画面は、血の色をイメージさせる暗い赤。データ表示が詳細でリアル。ヤバイ。
しばらくすると人類が対策を取り始める。ここからは人類と俺(病原菌)の知恵比べだ。人類が特効薬を完成させるまえに、全人類を絶滅すべく俺は進化していく。

最初に症状を強くしないほうがいい。気づかれると人類は治療薬研究に躍起になる。軽い症状のままで感染拡大、大半が感染したころに凶悪化、致死率を高める。殺して研究スピードを抑えるのだ。
「黒死病より多くの人間を死亡させた」「アメリカ大統領が病気になった」「航路閉鎖!」 次々と不穏なニュースが流れる。
不安感を煽る音楽、咳や人の嘆く声、少女が歌う童謡が、ときどき混ざる(怖い)。
 
【伝染病シミュレーションは不謹慎なのか?】
伝染病になって人類を滅亡させるゲームなんて不謹慎だという人もいるかもしれない。
でも、プレイしてみると、人間の感情移入の力はあなどれないと思う。
航路が閉鎖されれば「しまった!」と思い、特効薬の開発が進めば焦る。
にもわかからず、特効薬の開発が完成して、「Baroqueは根絶間近」と表示され、「世界は破滅的な伝染病から生き延び、Baroqueを完全に根絶するだろう。ほとんどの人間は死亡したが、生存者が人類を再建し前進していく事だろう」というメッセージを読むと、晴れ晴れとした気持ちにもなる。
人は簡単な善悪だけに依存しているわけではない。
悪だと思えるものにも感情移入し、多層的な視点で世界を眺めることができる。世界は、ちっぽけな自分が考えるよりも、もっと複雑で多様だ。その豊かさを知ることは無駄じゃない。
『Plague Inc.‐伝染病株式会社‐』はiPhone/iPad、Android版などで遊べる。
(米光一成)
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