ED80年代すぎませんか!
最高です『キルラキル』。一回りしてオシャレに見えてきた。


ジェットコースター的勢いの熱血展開が面白い『キルラキル』みるみる加速中。二話目です。
やっと全体像というか、この世界が抱えている根っこの部分のチュートリアル一段回目に登った二話目でした。

そう、まだ本番じゃないんですよ。見てないひとはまだ間に合いますからニコニコ動画で見てきてね。
一話でヒロイン・流子とボクシング部の戦いを見て、こういうのが続くのかなー?と思ったら、そうではなさそうです。
一話・二話は強化制服の鮮血がいかなる力を持っていて、どういうふうに流子とタッグを組むのかの「例」を見せる段階。一話が男子極制服、二話が女子極制服。
今後ももちろん(OP見る限りでは)2つ星の多くの敵、四天王と倒していく展開はありそうですが、流子の父殺しの真相、神衣とはなにか、そもそもなぜこの世界では「衣装」がここまで深く描かれるかが沢山の軸になって、大きな一つのテーマが描かれていきそうです。
物語自体も一本じゃない。たくさんの繊維で、それが『キルラキル』という布になる。その布石がちょっとずつ出始めました。


●繊維と布、人と群れ
今回からOPが付き、二話では極制服製造の様子も描かれたことで、テーマが一気に浮き彫りになりました。
「服」であり「布」なんですよ。
繊維は一本では脆いものです。しかしそれを撚り合わせ、秩序正しく配列し、布になった時、強靭なものになります。
流子の着ている……いや、着られている鮮血のシーンに、繊維がガッと均等にならぶカットインがあります。
そうすると流子は強くなる。力もそうですが、一話で出てきたように「強度」もです。

新しく付いたオープニングとエンディングを見ていると、人と人が組体操のように組み合っている曰く有りげなカットが挿入されます。
秩序正しく、支配という名の元に人々が並び整う時、強い構造を持つ。
これが生徒会長であり、今のところ(?)流子の敵である鬼龍院皐月の思想。
まさか皐月が街全体を支配下に置いているたあ思わなかったけどね。確かに強靭だ。


●秩序と、人間の階層
普通のアニメなら「そんな秩序ゆるさん!ふざけるな!」となるところですが、二話を見るとどうも違う。
確かに2つ星の、「にわか」な力を持った生徒たちや、四天王のうちの猿投山は、半端に力を極制服から得ているせいなのか、理不尽すぎる暴力と服従を押し付けてきます。
マコのギャグでソフトにしてるけど「コートの上だからルールに従え」という猿投山とテニス部部長函館の言い分は、1ミリも正しくなくてびっくりしたよ! お前らがルール守ってないだろ!

それに比べて、皐月は意外にも出てくるキャラの中ではかなりの常識人なんです。
現時点で流子視点で、つまり「父の敵」という視点でしか見ていないので、ラスボス感半端ないですが、一つ星よりも、二つ星よりも、四天王よりも、よっぽど人間的にマシですよ。
流子に対してちゃんとフィフティ・フィフティの立場を保っているのは彼女くらいじゃないですか。あとのやつらは2話時点では、極制服の力に溺れて図に乗っているだけです。

これはおそらく、皐月が学校を中心として強靭な、布のような体制を意識しているからです。
「恐怖こそ自由! 君臨こそ解放! 矛盾こそ真理! それがこの世界の真実だ! 服を着た豚共! その真実に屈服せよ!」(一話セリフより)
実にライバルらしいセリフなんですが、秩序正しく並ぶ繊維の強さを考えると、あながち間違っていないのです。
制服を作っている裁縫部でのセリフも面白い。
「男子の詰め襟は陸軍の、女子のセーラー服はその名の通り海兵のものだ。この国は若人に軍服を着せて教育することを選んだ国家だ。ならば我々本能字学園は制服を戦闘服とする、服を着た豚達を支配する象徴とする」(二話より)
この強さは「ファシズム」という歪んだ強さであることも、豚という言葉や授業のシーンでほのめかされています。


●秩序と、貧しくも自由な人間性
二話では、一話で一瞬しか映らなかった本能字学園の下にある街の様子と、最下層の暮らしまで描写されていました。
最下層は無印制服生徒の「スラム街」。最初に流子がやってきた場所であり、満艦飾マコの住んでいる街です。
いやあ……想像を絶する最下層っぷりだったね。
お父さんが○医者だとか、食べているものが○だとか、マッハのスピードで描いていたけど強烈です。

流子はそれに対しドン引きなので、おそらく流子がいる「外部の日本」ではこれは普通では無いのでしょう。
詳しく語られてはいませんが、身体を売る人あり、ゴミあさりありの本当のスラム。
ですが満艦飾家が非常に楽しそうで幸せそうな、初の「家族」として、個を持って暮らしているのが興味深い。流子は満艦飾家で暮らすことになりそうです。
貧しいかわりに、秩序に振り回されない、自由さを持った場所です。
つか満艦飾家はなんであんなの食べてるのに、ゴミ箱に豪華な肉っぽいもん捨ててるの? 考えたら負け?

その一つ上は、一つ星の生徒が住む「団地」。ここが僕が最も興味をもつところです。
団地マニアなので。
今のところ無印と二つ星ばっかり目立っていますが、数は一つ星が一番多いはずなんですよ。
それがみっちり、それこそ布の繊維のように団地にギュウギュウに住んでいるとしたら、彼ら・彼女らは何を考えているんだろう?
そもそもその一つ星組、モブな彼らが描かれるかすら今定かでない。
非常に興味がある、忠誠を誓う足軽達、一つ星。是非とも何らかの形で描かれて欲しい。

二つ星の住んでいるであろう「高級住宅」。一つ星が住んでいる団地一つまるまるレベルの大きさで、ブロックごとに住処を持っているので、これは相当数が少ないです。
誰が住んでいて、どのくらい出てくるのかはわかりませんが、スラム・団地との比較露骨です。
流子は疑問を抱いていますが、満艦飾マコは言います。「わかりやすいでしょ?」
あーそうか。わかりやすいものに人はついていきやすい。
「矛盾こそ真理!」とはこのことか。


このアニメの背景は、アナログです。PCで描いていません。紙に絵を描いてスキャンしています。
それを意識した上で、マコの家のあるスラムのシーンを見返すと、とても味があるので是非チェックしてみてください。

●かわいいマコちゃん
さて前回にぎやかしにしか見えなかったマコが、二話で一気に流子を支えるキャラクターになりました。
まー、何も考えてはいないんです。試合中寝てるとか意味わかりません。彼女の体内時計多分10倍くらいのスピードです。
しかし、スーパーヒーローに見える流子に欠けていて、マコにあるものがあります。
それはどうしようもないポジティブさ信じる力です。
「なんとかなる!」「流子ちゃんなら勝てる!」
一切根拠ないんですよ! でも言っちゃう。

流子は比較的生真面目な性格。
腕っ節には自信があるし、仁義にも熱い。ただし自分を上回るものにはまだ強くでられない。気圧されると弱い。
あんなにバイキンマンみたいに逃げるヒロイン初めて見ました。
しかしマコは、何も考えてないがゆえに、一度「こうだ」と思ったもの、友人の大好きな流子に対して感じたことに対して、裏表なく何でも言ってしまいます。たとえ滅茶苦茶でも。
「勝負に負けたかもしれませんが、友情で勝ってます! 友情で勝つということは、人生で勝つということです!」
ギャグパートなんですが、このセリフ、すっげー好きだなー。そうだよ、勝ちだよ。

このアニメはヒーローが苦悩して乗り越えるアニメじゃないんです。
滅茶苦茶な一線を乗り越えて、どうぶん殴るかのアニメなんだよ。
そのきっかけを作るのがマコです。これからどんどんキーパーソンになっていきそうで、大いに期待しています。
しかし、実は「打たれ強さ・精神的タフさ」だけでいうと、流子より強いんじゃないのこの子?
かわいいよね。

二話のバトルシーンも十二分すぎてアブラマシマシに面白いです。しかし人によっては「テニスバトルはもっと色々描いて欲しかった!」という意見もあるんじゃないかと思います。
そして、それは正しい意見だと思います。
なぜなら、二話は先にも書いたようにチュートリアルで、函館のテニスの試合はこの世界の説明だからです。メインは皐月と流子が刃を重ねるという部分ですから。

●今週の見所と、昭和チェック!
『キルラキル』の昭和をほじくり返します。

・なんちゃらをねらえ
テニス部部長函館のセリフ「コートでは上のものはひとりきり!」、流子の「だれもわかっちゃくれないんだよ!」は、ご存知アニメ『エースをねらえ!』のオープニングから。
元は「コートではだれでも一人一人きり 私の愛も私の苦しみも だれもわかってくれない」。
予想通りの元ネタでしたが、やってることはどっちかって言うと『テニスの王子様』。だからテニスボールは相手に当てるもんじゃねえっつうの。
函館のメガネは、『ボトムズ』のスコープドッグでしょう。なんで?
ところでマコまでテニス部だったとは……ってことはひょっとしてあのおかっぱな髪型は、愛川マキでしょうか。

・満艦飾家
マコの弟の又郎が「おそ松くん」のチビ太的だというのはスタッフもコメンタリーで話していました。
お母さんは服装の配色、エプロン、謎の包容力などからして、十中八九「天才バカボン」のバカボンのママ。
お父さんは家でトランクス+上着ですし、職業がアレなので、デカパン先生でしょうか。
又郎の読んでいるマンガのタイトルは読み取れませんでした。誰か教えて。テニスの試合で生徒が「ぼくら」(1954年創刊)を読んでいたのは驚きましたが。
満艦飾家は昭和ネタの塊です、探してみましょう。
あと、グッズで「内臓湯のみ」作ってください。ぼくがほしい。

・タイトル
一話時点であちこちで指摘されていましたが、サブタイトルは昭和歌謡です。
一話『あざみの如く棘あれば』は、茶木みやこによる、TBS『横溝正史シリーズII』、古谷一行の金田一耕助シリーズのエンディングテーマ曲。1977年です。
二話『気絶するほど悩ましい』はCharのシングル曲。1977年です。
どちらも作詞はは阿久悠です。
三話は『純潔』。1972年に南沙織が歌っていますので、もしこの昭和縛りが続いていればここが元でしょうか。でも阿久悠ではないです。阿久悠は南沙織の『約束』の歌詞を書いていますが……。

・流子の父
鮮血「ヒゲで、眼帯で、白衣をまとった、猫背で下駄で、片手に杖でねずみをつれた……」
どんな父さんだよ、と突っ込まざるをえないですが、絵面をモンタージュすると『マジンガーZ』の兜十蔵にしか見えません。

・下水道
流子が一度倒されて、下水道に流されるシーンがあります。
一話といい、ほんとなんかあったら地下に行きますね。地下は男のロマンです!
担任の美木杉がなんでいつも地下をうろうろしているのかは、今後明らかに……なるのでしょうか?
あ、美木杉の乳首とかに関しては今は考えないことにします。
地下に行く→なぞの人物に出会う→新しいアイテムを手に入れパワーアップ。
ロマンですねー。しっかしあの変身シーンは衝撃すぎました。そういうのもあるのか。

・テニスデスマッチ
流子が打ち返そうとした球が、回転力で腕を駆け登って顔に直撃するというのは、『アストロ球団』の殺人L字投法のパロディ。
そしてトゲです。またトゲです。生徒会はトゲなんです。
テニスコートはトゲだらけ。ネットはいばら。
死ぬだろ!と思ったら、流子がたたきつけられるシーン、骸骨だらけでした。死んでた。
この「生死」適当なノリと、お色気シーンの「性」こそが『キルラキル』最大の魅力だと今のところは思っています。
ガットをちゃんとはらないラケットがぶっ壊れるのは、何も鮮血の力だけじゃないと思うよ……あんな張り方したら壊れるよ……。

まだまだ、「皐月様との対面」という前座です。もちろん内容は全力投球ですが、ただ次々敵を倒す昭和テイストアニメではない。
ハイテンションの中に、皐月のファシズムと、流子の仁義の戦いが、父の仇を越えて描かれそうです。
三話は皐月がメインになりそうです。ロリ皐月様を楽しみに芋虫コロッケ食いながら待機!

(たまごまご)
考えたら負け「キルラキル」。2話もアブラマシマシ絶好調
男の極制服を描いた一話に続いて、女の極制服を描いた『キルラキル』二話。階層社会やファシズムなども飛び出し、この世界がじわじわ掘り下げられ始めました。ただのハイテンションアニメじゃないぞ。
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