クリエイターインタビュー、4人目は「キルラキル」でキャラクターデザイン・総作画監督を担当する、すしおが登場。
「キルラキル」の企画当初の秘話から今後の展開のヒント、そして「天元突破グレンラガン」のエピソードなど、またまたおもしろい話がてんこ盛り!
今回も「キルラキル」大好きたまごまごさんからの質問コーナーもあります!(後編に掲載)
超絶センスをもった人たちばかりいたガイナックス
───すしおさんはガイナックスに居続けたのには何か理由があったんでしょうか?
すしお ガイナックスって超絶センスを持った人たちばかりがいたので自分よりもうまい画とか、いろんなセンスの絵柄を普通に見ることができたんです。
───どんな方のどんなところでしょう?
すしお 日常の風景のレイアウトでいえば平松(禎史)さん、エフェクトをデザイン的に描く吉成(曜)さん、理屈にとらわれない今石(洋之)さんのセンス、鶴巻(和哉)さんの演出、そういった人たちがゴロゴロいたんですよね。みなさん、ただうまいのではなく、唯一無にのセンスを持った人たちばかりです。
───たしかに有名な方ばかりで、すごいスタジオですよね。
すしお いい反面、すごい人たちばかりなので、自分の必要性を常に問いてしまうんです。「いらないでしょ、オレの絵なんて」とか「俺、必要とされていない」とかって感じちゃって、ちょっとノイローゼ気味になりました(笑)。
───そんなことないですよ!でもそこまで思ったのにやめなかった理由は?
すしお 僕は吉成さんが大好きなので、吉成さんの画を見るためだけにアニメ業界にしがみついていた。吉成さんの机にたまっている落書きとか、吉成さんのどんな画でもいいから、それを見られるだけで幸せでした。
すさまじくアホなことを全力でやっているのが「キルラキル」
───今回、今石さんの「キルラキル」に参加されるわけですが、気に入っている部分やテーマみたいなものってありますか?
すしお 「キルラキル」は、すさまじくアホなことをみんなが全力で作る感じが楽しいなって思います。もちろんストーリーはしっかりしているし、アホだけじゃないんですけどね。いま(注:インタビューの当日、10.21)完全にギャグ回の4話をやっているんで、そういう気持ちになっているんだと思います(笑)。
───「キルラキル」も密度が濃くて大変ですよね。
すしお 最初は「キルラキル」も「昔のテレビアニメみたいに枚数を制限して、ラクに作ろう」って言っていたのに、フタをあけてみると「おわんねーよ!」みたいなことばっかりで(笑)。もう、最初から大変だって言って〜!!!って感じです(笑)。家の玄関を開けて、靴を脱いで、そのままフトンに突撃したのは「キルラキル」がはじめてでした(笑)。でも楽しいからそこまで頑張れるっていうのはありますね。
モブキャラも捨てられないほど「キルラキル」を頑張れる
───最初にラクして作ろうって言っても、結局ラクじゃないと。
すしお 「キルラキル」の1話のコンテを見たとき、「たしかに『天元突破グレンラガン』(以下、グレン)のときよりはラクに作れるかも」とは思ったんです。でもトメ絵のスライドを多用する場合、動いているように見える止めの絵を描かなきゃいけないので、それが大変です。
───他に作画で大変なことってありますか?
すしお 自分の性格的に「キルラキル」の世界に出てくるキャラも全部捨てきれなくて、モブキャラも修正しているんです。本来はメインキャラだけ修正すればいいんでしょうけど…。この世界にいるキャラは全員ちゃんと描いてあげたいんです。すごい作業量ですけど、これは自分で選んでいるから仕方ないですね。
───他に「キルラキル」で心がけていることはありますか?
すしお あまり枚数を使わずに、リミテッドアニメを意識した手法でキャラのたたずまいとか芝居をちゃんと描きたいなって思います。アニメーターの田中敦子さんの「ルパン三世 風魔一族の陰謀」のときみたいな芝居の作り方を常に意識しています。あとは、作画を見せつけるような“ドヤ作画”にはしないこと。作品に集中できるような作画を心がけているんです。だから、「作画がすごかった」という感想より、「アニメでこんなに笑ったの久しぶり!」とかの感想のほうが嬉しいです。
キャラクターづくりとは、本来時間をかけないとできないもの
■纏流子
───キルラキルのメインキャラについて聞いていきます。まずは主人公・纏流子から。
すしお 髪の毛の赤いメッシュは初期から決まっていたんですが、目のバランスやディテール、等身とか、なかなか「流子だ!」っていう感じにまとまらなくて。数カ月ぐらい、流子ばっかり描いていてノイローゼみたくなりました。んで、「これいいんじゃねえの?」ってピタッとくるのが一年くらいイジくり回して描けて。今石さんに見せたら手応えがあったんで、そのときようやく流子がFIXしました。
───ひらめいた何かがあったんですか?
すしお 思いつかないときはひたすら描くしかなくて、かいてかいてかいてかいてかいてかいてかいてかいてかいてかいて…んで、「もうわかんねーっつの!!」って。
───時間にしてどのくらいかかったんですか?
すしお 他の作業をやりながらということもあって、流子と神衣鮮血は一年以上かかりましたが、キャラクターデザインをやってみて、本来このぐらい時間をかけないと、キャラを作ることができないんだな…と思いました。
■鬼龍院皐月
───では皐月はどうですか?
すしお ある女優さんがモデルだと言われていたので、それをいったん2次元にして、そこに自分の好きなものを足していったら、流子や他のキャラに比べたらスムーズに決まりました。
■満艦飾マコ
───マコはどうですか?
すしお 昔からぱっつんヘアーの女の子が大好きなんで、80年代テイストとか、自分の好きな物をぶっこんで、ブレンドして作りあげたんです。マコだけはあんまりみんなの意見を受け入れなかったです。これはもうこういうキャラって(笑)。
■美木杉愛九郎
───愛九郎は?
すしお TMNの宇都宮隆とか、レコード大賞を受賞したときのジュリー(沢田研二)とか、あのスマートでかっこいい感じです。キャラクターは青春時代に好きだったものや、自分の引き出しを全部使い果たすつもりでデザインさせてもらっています。あと、デザインはシナリオが同時進行で進んでいたこともデカイです。これがないと何のとっかかりもないし、ただイケメンを描いてと言われても描けないんで。たとえばシナリオを読んで、流子にはそういう面もあるんだなってわかると、それをデザインに反映させたりしました。
(小林美姫)
後編に続く