先月26日、ドネルケバブの考案者とされるカディル・ヌルマンさん(80)がベルリンで亡くなった。ドネルケバブとは、回転させながら焼いた羊肉や牛肉、七面鳥肉、鶏肉を薄切りし、サラダやソースとともにパンに挟む食べ物だ。
現在は中東や欧州を中心に世界的に広がっている。

訃報を伝えた英BBCによれば、今欧州で広く見られるように、パンに肉とサラダを挟み提供したのは、1960年にトルコからドイツへ移民としてやって来たヌルマンさんが、1972年にベルリンで始めた露天に端を発するそうだ。トルコ・ドネル製造業者協会も、2011年にヌルマンさんを「考案者」として認定している。

発祥地ベルリンでは1000以上の店があり、ドイツ全体では1万6000を数える。肉を焼くための機械も、欧州連合(EU)市場の80%が独メーカーにより供給されている。しかしヌルマンさんは、パンに挟むドネルケバブを考案した際に特許は取らなかったため、それが世界的に成功を収めた今も、ヌルマンさん自身に利益はもたらされていない。


パンに挟んだ形のドネルケバブは欧州各国により形は少しずつ異なる。筆者が暮らすフランスでは、肉は牛肉や七面鳥、鶏肉が使われる。そして牛肉と七面鳥肉もしくは鶏肉を重ね合わせた一つの肉塊(店により単一の場合もある)を回転機で焼き、スライスしたものを提供する。伝統的にケバブは羊肉だがフランスではあまり使われない。ソースはケチャップ、マヨネーズ、サムライ(ケチャップ、マヨネーズと唐辛子から作られる調味料ハリッサを混ぜたもの)など。肉を挟むパンはピタやバゲット、ガレットなどで、そこにフレンチフライを添える。


以前暮らしていた英国の場合、肉は羊肉か鶏肉で、フランスのように混ぜ合わせたものではなく単一のものが使われる。多くの店では羊肉と鶏肉が2種類回っており、注文時に選ぶ。

ガーリック・ヨーグルトソースやチリソースをかけ、挟むパンは主にピタだ(ナンを使う店もあり)。チップスと呼ばれるフライドポテトを加える場合もある。

ドネルケバブは、フランスでどのくらいの価格で売られているのか。ケバブ・ポータルサイト「ケバブフリット・ドットコム」によれば、パリの場合、ケバブ・フリット(パンに挟んだドネルケバブにフレンチフライを添えたもの)の平均価格は5.03ユーロ(約680円)だそうだ。


ただしフランス全体で見るとパリより高い場所は多い。もっともケバブ・フリットが高価な地域(海外県およびモナコ含む)はコルシカ(6.44ユーロ:約870円)、西インド諸島のグアドループ(6.1ユーロ:約824円)、南部ドローム(5.76ユーロ:約778円)、インド洋のレユニオン(5.58ユーロ:約754円)、モナコ(5.5ユーロ:約743円)の順だ。一方でもっとも安価な地域はセーヌ・マリティーム(4.29ユーロ:約580円)、南部ブーシュ・デュ・ローヌ(4.46ユーロ:約603円)、南西部ジロンド(4.47ユーロ:約604円)、南西部オート・ピレネー(4.48ユーロ:約605円)、北東部バ・ラン(4.54ユーロ:約614円)になる。全国平均は4.94ユーロ(約668円)だ。

欧州は日本のように深夜まで営業しているレストランは多くない。もっとも小額の紙幣(5ユーロ札)1枚で足り、量もそれなりにあって素早く、深夜でも購入できる手軽さが、ケバブをフランスでも人気ファーストフードの地位に押し上げている。

(加藤亨延)