この商品を企画したNゲージ鉄道模型メーカー、グリーンマックスの井上さんに、並々ならぬこだわりをお聞きした。
「力を入れたのは意匠ですね」と井上さん。実際の東横インで使用される外壁カラーを始めとし、看板、開口部、換気口、窓の非常用進入口を示す▼マークまで、東横インからの協力を得て精密に再現した。
特に看板は、フォントで処理するのではなく、実際の看板を縮小した全く同じものを、精密印刷により表現。なおオプションで、韓国6店舗を含む244店舗(2013年10月現在の全店舗)の袖看板ステッカーも用意しており、お好きな街の東横インに衣替えすることができる。
モデルには、メイン看板が「東横イン」とカタカナで書かれたNO.2709と、「東横INN」とアルファベットで書かれたNO.2710があり、これは建てられた年代によって違うという。表記が変わった2010年以降のタイプである後者は、看板だけの違いではなく、近年ガラスが強化されたことにより、1階のガラスの格子が少なくなったといった、細かな変化まで見ることができる。
ではこの模型に一番近い実際の東横インは? と井上さんにお聞きすると、「取材したのは『羽田空港2』の店舗ですが、こちらは14階建てと規模が違います。知っている範囲では、東京の『大塚駅北口2』や静岡の『藤枝駅北口』が似ていますね」と即答。そのお答えに、東横インへのただならぬ知識を感じることができた。
同社が東横インを鉄道模型にしようと考えたのは、全国の駅前によく建っているから。東横インの基本コンセプトは「駅前旅館の鉄筋版」。ホームページには「トレインビューホテル特集」というページがあり、鉄道がよく見える支店を紹介するほどの鉄道愛を持つ東横インが、Nゲージの世界に登場したのは必然といえよう。
井上さんによると、Nゲージ鉄道模型にはこれまで、一般的なホテルという模型はあったが、今回のように実名のホテルが登場するのは初めてなのだという。なお、同社では実名の完成品ストラクチャーシリーズとして、2012年には公団とUR賃貸住宅の許可を得て、「公団住宅」の150分の1スケールモデルも発表した経緯がある。
気になるユーザーの反応は? 2013年12月20日のメーカー発売を前に、10月のホビーショーで試作品を発表したところ、意外にも鉄道マニアではない人からも、多くの反応があったという。
ネットでは「鉄道のない石垣島の看板ステッカーがあるのは何故?」とも言われたが、「鉄道マニアだけではなく、東横インマニアにも楽しんでいただけるものを目指しました」と井上さんは答える。東横インマニアたちの感想も、ぜひ聞きたいところである。
完成品ストラクチャーシリーズ・東横インは、NO.2709とNO.2710の2タイプがあり、1台各5229円(オプションステッカー全6種1050円)。模型店やインターネットで購入できる。鉄道ファンならずとも1台購入し、あなたの思い出の東横インのオーナーになってみるのはいかがだろう。
(清水2000)