韓国の地方都市・大邱(テグ)市が運営する観光サイトに、興味深いものを発見。大邱の郷土料理10を紹介するページに、クッパやホルモン焼きなどとともに「ヤキウドン」なるものが取り上げられているのである。

発音もそのまま「ヤキウドン」。サイトに添えられた説明を読むと、「30年前に大邱で開発された料理」「大邱の中華料理屋ならだいたい扱っているメニュー」とある。日本なのか韓国なのか中国なのかよく分からないこの料理、一体何なのか? ソウルからバスで3時間半の大邱を訪れ、実際に食べてみた。

記者が訪れたのは、大邱の繁華街に店を構え、大邱ヤキウドンの元祖と言われている「中和飯店」。漢字で書かれた看板や、出されたメニューに並ぶ中国語を見てもわかるように、思いっきり中華料理店である。
早速、メニューの一番上に書かれていたヤキウドン(7000ウォン=約676円)を注文。すぐに登場したそれは、一目見ても日本の焼きうどんと全く違う。うどんはうどんだが、コチュジャンソースで真っ赤に染まり、いかにも辛そうなのだ。また、平皿に載っているものの、汁気は多めとなっている。
一口食べてみると、これがなかなか美味い。激辛だが、ついつい次の一口を欲してしまう中毒性のある辛さで、気がつくと最後まで平らげてしまった。豚肉、タマネギ、ハクサイ、ホウレンソウ、エビ、イカと具沢山なのもうれしい。


お店の人にお聞きすると、40年前にヤキウドンを開発したのは、中国人である初代社長なのだという(1954年に開業し、今は2代目)。だし汁に小麦粉麺が入った料理「ウドン」は、かつて日本から持ち込まれ、韓国でも既にポピュラーな食べ物となっているが、初代社長は中華料理に多い、麺を炒める料理を応用し、韓国人の好みに合わせて唐辛子をたっぷりいれ、「ヤキウドン」とした。「ヤキ」という単語はもちろん日本語の「焼き」から来ている。当時は日本語を話せる年配の方も多く、また焼いた餃子(マンドゥ)のことを「ヤキマンドゥ」と言うように、「ヤキ」という単語を使う機会も多かったのだそう。

このヤキウドン、大邱では他の中華料理屋でも普通に売られるほどに大衆化したが、韓国の他の地域ではほとんど見られず(ウドンを鉄板で焼く料理も時々あるが、ヤキウドンという名前ではなく、味付けも異なる)、まさに大邱の郷土料理のような存在となっている。
お店には、お年寄りから若者まで、いろんな世代の人がヤキウドンを食べに来るという。昔からの常連客が、子供を連れてやってくることも多いのだとか。

美味しくさえあれば、食べる人にとっては、日本も韓国も中国も関係ないのかもしれない。味に国境はないと思わせてくれるこの料理、大邱に立ち寄る機会があったら、話の種にぜひ味わって欲しい。
(清水2000)

取材協力 「中和飯店」大邱広域市中区南一洞92
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