■「大丈夫、看護師も待機していますから!!」(エステー特命宣伝部長・高田鳥場)
「おい、高橋愛を溺愛するお前ら!! 今日はお前らの考える100倍はツラいからな。たった15秒、30秒のCMを作るのがどれだけ大変かがわかるはず!」
会場に集まった高橋愛ファンクラブ会員に叫ぶエステー特命宣伝部長・高田鳥場。胸をはだけると、高橋愛のライブTシャツ
が顔を出し、会場がどよめく。
昨年12月24日、高田鳥場部長は高橋愛の「ムシューダ」新CM起用とともに、同CMの撮影にあたって、ファンクラブ会員限定で共演者を募集するとTwitterで発表。
今年1月には<エキストラというかファン役の人が欲しいのです。本物のファンがほしいのです。集まってくれた人数に合わせて企画考えます。>ともツイートしていた。
この前代未聞のCM撮影に集まった高橋愛ファンは98名。
なのに、関東近辺はもとより、岩手、新潟、福井、長野、大阪、広島、福岡など、はるばる遠方から来た人も。ただただ、高橋愛と同じ時間を過ごしたい、というモチベーションだけで大雪にもめげずやって来たのだ。
高田鳥場部長は会場のファンに向かって、呼びかける。
「去年、愛ちゃんの原宿でのライブに行ったんです。そこで、ファンのみなさんの姿、熱意に感動しました。それで思いついたのが今回のCMです。大変だと思いますけど頑張っていきましょう! 大丈夫、看護師も待機していますから!!」
午前中はずっとリハーサルに次ぐ、リハーサル。ファンたちはステージに向かって懸命にこぶしをつきあげる。
監督の容赦ないダメ出しが飛ぶ。
「もっと声を大きく! 口も開けて!!」
「もっと激しくジャンプして」
「手の位置はキープしたまま、頭は激しく振って。クレイジーに!!」
リズムに合わせてタテノリを繰り返すファン。
本気のタテノリ。まだリハなのに……。
高橋愛本人がいないところでも、高橋愛のためなら出し惜しみはしない。
休憩時間に、ファン歴12年だという会社員の男性に話を聞いた。
「会社で上司とうまくいかなかった時、愛ちゃんの笑顔で乗り越えることができました。今日はその恩返しです」
■嵐を呼ぶ女!? 高橋愛が登場!
昼食後の13時過ぎ、ようやく、ようやく高橋愛本人がファンの前に登場した。
「もうさ、なんでこんな大事な日に大雪なのぉ(笑)。問題はやっぱり私? 皆さんご存知だとは思いますが、私、モーニング娘。
ファンへの感謝とともに、雪の元凶?である「嵐女」のエピソードを語る。数メートルの近さから友達のように話しかける高橋愛に、ファンのテンションは急上昇。
「どうしよう!すごいカワイイ!!」「ありえない!!!」と、感極まって泣きだす女性たちも。
ようやく本番が始まる。……でも、ここからのほうが当然長い!
30秒のCM作品を、カメラアングルを変えながら30シーン以上撮影。
そのひとつひとつのシーンで、3テイク・4テイクと何度も繰り返していく。
意外と長く感じるのが、テイク毎のカメラチェックの待ち時間。
この合間合間を、高橋愛がMCで盛り上げる。
「今って円周率は『3』なんでしょ。ゆとりめ!(笑)。私の時代は『3.14』でしたよ。まあ、3でも3.14でも、私バカだから計算苦手なのは変わらないんですけどね。」
即席の発声講座やヨガ講座で時間をつなぎ、ファンと交流を深めていく。
そして17時10分、ようやく撮影が終わる。高橋愛が合流してから4時間以上、ファンにいたっては、集合時間から7時間以上が過ぎていた。
ファンの中には、大雪の影響で帰れなくなった人もいた。
福井県から深夜バスで来たという男性ファンも、その一人だ。
「帰りも深夜バスのつもりだったんです。でも、さっき、バス会社から電話がかかってきて、雪で運休になったと言われました。今から宿を取ろうにも、3万円以上のホテルしか空いていません。まいったなあ、今夜はカプセルホテルかな(笑)」
ファンたちからは愚痴ひとつ聞こえてこない。むしろ、嬉しそうですらある。
■「次、何を話そう?」ってトークのことばっかり考えてました」(高橋愛)
CM撮影を終えた高橋愛に話を聞いた。
─── 撮影お疲れさまでした。今回も歌ネタでしたね。
高橋 前回の歌がどうしても頭から離れなくって、憶えるのが大変でした(笑)。今回のも、一度憶えると頭から離れない曲でずっと頭の中でリピートしています。普段の生活の中でつい口ずさんじゃうCMになったんじゃないかなって思います。
─── 前回のCM撮影後、あまりに頭を振るCM内容のためにむち打ちになった、とコメントされていました。今日の収録でダメージを負った箇所は?
高橋 今回は大丈夫です。プロモーションビデオもそうなんですけど、何度も踊るのって、さすがに最後の方は疲れが出てきて、「あと何テイクですかね?」って思わず聞いちゃうこともあるくらい(笑)。でも、今日はそれがありませんでした。ずっと新鮮で、とにかく楽しくって。
─── それはやっぱり、ファンとの撮影だったから?
高橋 そうですね。ファンの皆さんの方が明日、筋肉痛で大変なことになってるんじゃないかなって心配です。さっきファンの方とお話をする時間があったんですけど、「CM撮影ってこんなに大変なんだね!」って声をかけてくださる方がたくさんいました。ファンの方と一緒にCMに出演できるなんて普通だったらありえない。
─── 撮影もさることながら、合間をつなぐMCの引き出しの豊富さに驚きました。
高橋 CMを撮影したというより、イベントをやり終えたような感覚ですね。撮影中も「次、何を話そう?」ってトークのことばっかり考えてました(笑)。でも、ファンの方たちを目の前にすると、自然と話題が出てくるんです。
─── そんな風に周囲に気を配れるのは、やっぱりモーニング娘。でリーダーを経験したから?
高橋 客観的に、全体的に物事を見られるようになったのは、リーダーになってからだと思います。「自分たちのグループは今こうだからこうしよう」「周りがこうだからこっちをやらなきゃ」とか。「つんく♂さんがこの曲を出してきたってことはどういうことなのか」といったことも自然と考えるようになりました。
── 結果、4年以上リーダーを務めました。
高橋 ちょうど私がリーダーになったときが「(アイドル)戦国時代」といわれるようになった時期でした。テレビに出られない時期もあったし、辛かった時もあったんですけど、こういう時だからこそ力を貯めなきゃいけない、頑張らなきゃいけないっていうのはつんく♂さんからも言われていました。
── そして、間もなくご結婚です。今日も「結婚おめでとう」という横断幕を掲げていたファンもいました。
高橋 結婚しても変わらず応援してくれる安心感……安心感じゃないかもしれないけど、ホッとしたというか、素直に「ありがとう」って思えました。
独身最後の勇姿がつまった高橋愛の新エステーCMは、来月中旬頃からON AIRされる予定だ。
(オグマナオト)