最近は日本でも各種メディアで紹介される機会が増えてきたポートランドだが、いったい何が魅力なのか? その答えを知るきっかけになる一冊が、今年1月に発売された『TRUE PORTLAND 創造都市ポートランドガイド』。日本初のポートランド専門ガイド本だ。
先日、本の発売を記念したトークショーが都内で開催され、ポートランドからシェフらが来日。そこで語られたポートランドの魅力やフードシーンについて紹介しよう。
「ポートランドには変わった人が結構いる(笑)」
のっけからそう言って会場の笑いを誘っていたのは、ポートランド・オレゴン観光協会のジェフ・ハマリーさん。
「気取らず、格好つけず、幸せに生きていける街。田舎って感じではないですよ。競争せず、自由に、クリエイティブに生きていきたい人にぴったりです」
実は今回発売されたガイド本には“the unofficial guide for creative people”というサブタイトルが付いているのだが、「ポートランドの人の生き方が、アンオフィシャルな感じなんですよね」と茶目っ気たっぷりに続けた。
移住者が多い背景には、そういった街の雰囲気に加え、物価がそれほど高くなく、暮らしやすいこともある。しかもオレゴン州は消費税ゼロ。また、山も海も近くにあって自然に近い。大手チェーン店より、地元のローカル店を応援する。
さらにオーガニック食材が豊富にそろうグルメタウンとしても知られ、人口当たりのレストランの数は全米一に上るほど。ポートランドを代表するレストランの1つ「Departure」のシェフ、グレゴリー・ゴールデッドさんは、かつてニューヨークの有名店で腕を振るっていたが、ポートランドに来てからの変化をこう語った。
「ニューヨークにいたころは、コンセプトやアイデアにありきで料理を作っていた。でも今は食材ありき。旬は何か? 手に入る食材は何か? 材料からスタートする料理に変わりました」
ポートランドの人たちはスーパーに買い物に行くのと同じくらい、日常の延長として気軽にレストランで食事を楽しんでいるそうだ。また市内にビール醸造所は60もあり、1つの街としては世界最大。市内だけで約1000種類ものビールが飲めるビール天国だ。
ポートランドの人たちが、働きつつもアクセクした感じがなく心地よく暮らせている理由について聞かれると、グレゴリーさんは、「街が小さいこと。人々が優しいこと。気候がよく、暑すぎず寒すぎないこと。そして一番大切なのは、みんな支え合おうという姿勢がとてもあることだと思う」とコメント。
同ガイド本では、「EAT(食べる)」「GET INSPIRED(感化される)」「SLEEP(寝る)」など動詞カテゴリ別に420以上のスポットを紹介しているほか、現地在住者によるおすすめの過ごし方やコラムも充実しており、読み物としてもおもしろい。
ポートランドに暮らす人たちのサステナブルで身の丈に合った上質な暮らしを求める姿勢は、次世代のライフスタイルとしても世界中から注目を集めている。そんな現地の空気感を思いっきり感じられる一冊だ。
(古屋江美子)