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カステラは手づかみで食え、牡蠣にはシングル・モルトを掛けろ。文豪たちを魅了する美食のすべて

カステラは手づかみで食え、牡蠣にはシングル・モルトを掛けろ。文豪たちを魅了する美食のすべて
オビ文を借りれば、「谷崎潤一郎の好んだ鮎雑炊、林芙美子の思い出のうどん、池波正太郎の描いたカツオ飯など知られざるエピソードから小説の名場面まで、250冊を読み解いた!」となる。確かに読んでみるとこれらのくだりはグッと来る……ので中面に譲らせていただく。このほか、鮎なら獅子文六の表現も実に旨そうだ。宮部みゆきの鰹や豆腐、椎名誠のトマト、川上弘美のおでんにおむすび──。ああ、読むほどに腹が減る。
目次にずらずらと並ぶ「雑煮、おでん、鱈(タラ)、鮟鱇(アンコウ)、カツ丼……」。その数、ざっと40弱。とりわけ自分で目がないと思える食べ物に絞ってみる。

えーと、カツ丼、浅蜊(アサリ)、鰹(カツオ)、茄子(ナス)、トマト、鰻(ウナギ)、海老(エビ)、コロッケ、タコ焼き、豆腐、すし、すき焼き、カステラ……。

…………!

まるで絞れてない! と自分でも思うが、これでも全力で絞っている。だって、目次に旨そうなものが並びすぎている!

『食彩の文学事典』はこれらの郷愁を誘う食べ物や、なじみ深い和食が、小説やエッセイのなかでどのように描かれてきたか、世にあまたある膨大な小説・エッセイから「食」のシーンを紹介している。この一冊に取り上げられた作家は160人以上! 池波正太郎や開高健といった過去の「食の名手」はもちろん、まだまだ現役の山本一力や田辺聖子、角田光代や、若手では綿矢りさの作品まで幅広く取り上げられている。

■食べ物と作家。引かれた2本の補助線
例えば東海林さだおの『親子丼の丸かじり』からはこんな一節が切りだされている。

<カステラは、フォークで切ったりして食べるとおいしくない。カステラは手づかみ。手で持つとペタペタと手に付くが、それでも手づかみ。>(「大掃除のカステラ」『親子丼の丸かじり』文春文庫)

実際、食べ方でものの味はかなり変わる。僕もカステラは手づかみ派だ。カステラをフォークで食べるような輩は、カステラの角に頭をぶつけて……とか思ったりもするが、世の中にはカステラをフォークで食べる人もいるだろう。実際、食にまつわる体験や感覚は、とても個人的なものだ。

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