著者は立命館大学映像学部の渡辺修司氏と中村彰憲氏で、渡辺氏は『ガラクタ名作劇場 ラクガキ王国』などを手がけた元ゲームクリエイター。中村氏は中国ゲーム産業研究の第一人者。二人が共同で担当する授業を通して骨子が作られ、このたびの上梓となりました。渡辺氏は准教授で、中村氏は教授。共同研究の成果だといえるでしょう。
内容をざっと紹介すると、これまで曖昧だった「ゲーム性」という概念について、主に記号論の立ち場からメスを入れ、独自の定義を打ち立てています。「ゲームは現実世界と地続きの存在であるが、現実より挑戦意欲をかき立てる構造になっているため、ハマってしまう」・・・この構造のことを「ゲーム性」と呼んでいる、といっていいでしょう。
本書ではこの構造を「ルド」というモデルで可視化し、「パックマン」や「パズル&ドラゴンズ」をルドの連なりで分析するなど、ユニークな考察を進めています。しかしここでは内容や妥当性について、これ以上深掘りしません。というのも、筆者自身が編集協力でかかわっているからです。それよりも、少し俯瞰した視点で本書の位置づけについて紹介してみましょう。
そもそも「ゲーム性」の定義や、ゲームの研究が誰の得になるんでしょうか?