このドラマにはKAT-TUNの中丸雄一がフォトグラファーアシスタントの西原樹役で出演中。主演の沢尻エリカ、そして菜々緒とのキスシーンがあり、ファンにとってはちょっぴり複雑な役どころ……。
それはさておき、KAT-TUNは中丸の他に亀梨和也、上田竜也、田口淳之介の4人構成のグループで、かつては赤西仁、田中聖(2人とも事務所を退所)が所属していた。特に田中聖の脱退から一年も経たないこともあり、まだ寂しさが残る。でも物足りなさを感じないのは、この4人の姿勢にあると思う。
脱退騒動の翌月、2013年11月には4人になって初めてのミニアルバム『楔』(くさび)をリリース。グループの存在感をアピールしてファンを安心させた。『In Fact』はそれに続く二作目。歌詞には新生KAT-TUNならではのメッセージが込められている。
■ 何があっても前を向く!KAT-TUNの強さ
冒頭のドラマ『FIRST CLASS』は、女性雑誌の編集部を舞台に、編集者同士のポジション争い“マウンティング”が勃発している。作ったはずの企画書はパソコンから消されるし、裏金を渡して根回しするわ、編集長の座を手に入れるためだったら枕営業だって厭わない。
未経験にも関わらず編集者に抜擢された主人公の吉成ちなみ(沢尻エリカ)は、それだけでも同僚の反感を買うのに、遂には編集長の座まで手にしたことで戦いは一層激しさを増した。汚い手を使ってでも蹴落とそうするライバルたちを前に何度も心が折れそうになる。しかし何度も立ち上がり、正面から挑戦を受けて立つ姿が描かれている。
KAT-TUNも2006年のデビューからこれまでに色々なことがあった。中でもメンバーの脱退は、最もダメージが大きい。グループ自体のイメージダウン、ファン離れだって懸念される。過去に何十曲もリリースした楽曲の歌割りや、振り付けやフォーメーションもやりなおし。特にソロパートの穴埋めは曲の印象を変えてしまう。いなくなったメンバーの穴を埋めるのは、容易ではない。
でも、何があっても彼らは逃げなかった。言葉を濁したり、傷を隠したり、事務所の力を使えばうやむやにできた事もしなかった。
『スッキリ!』(日本テレビ系)ではこんなコメントをした。
「すごく僕自身は悔しい思いがありますね。はやり最初1人抜けて、5人でずっとやっていくんだという思いの中でやってきたので、それがかなわないことは悔しいです」と、心境を自分の言葉で語った。これに対して司会の加藤浩二は「えらいよ亀梨君。嫌なら出て来なくてもいいんだから。しゃべらなくていいんだから」とその姿勢を讃えた。
■きっちり「けじめ」をつけた異例のコンサート
2013年の大みそかに京セラドームで行った、単独カウントダウンライブでもそうだった。通常であればオープニングからドカーンと花火や炎を使った、ド派手な演出でスタートするはずのコンサートも今回は違った。
会場の照明が落ちると、ステージの正面からは黒いロングコートを着たKAT-TUNが静かに登場した。音響は一切なし、演出も4人を照らすスポットライトのみ。
会場が静まるタイミングで中丸が切り出した。「えーみなさん、ライブを始める前にですね、僕たちから気持ちを伝えなければならないと思っていることがあります。2013年を振り返ってみるといろんな気持ちにさせてしまったこと、その点、僕らも大変残念だし、申し訳なく思っています。我々は前に進まなければならないと思っています。」
コンサートをはじめる前に、メンバー全員が挨拶をするという異例の幕開けだった。コンサートの構成や演出からすれば、極力避けたかったことに違いない。でも会場のテンションが盛りさがろうが、「けじめをつけなければならない」という意思が伝わってきた。
困難を“乗り越えた”というよりは、受け入れて正面突破。失望しても、先が見えない霧の中でも逃げないで、という『InFact』に込められたメッセージは、そんな彼らの姿勢と重なる。まっすぐでブレることができないKAT-TUNは“昭和の男”だ。
3パターンでリリースした今回のシングル。
Sっ気たっぷりに心を揺さぶるところは、昔から続くKAT-TUNらしさでもある。何があっても前を向いて歩いてきた、新生KAT-TUNだからこそ歌える『In Fact』。心が折れそうな時に聞くことをおすすめします。
(柚月裕実)