フィンランドと聞いて思い浮かぶのは? ムーミン、マリメッコ、映画『かもめ食堂』、ノキア、などいろいろあると思うけれど、テキスタイルなどのデザインに注目している人も多いのでは? 今回はフィンランド出身で、日本でも今後ますます活躍されるであろうイラストレーター兼グラフィックデザイナーさんへの取材が実現!
彼女の名前はレーナ・キソネンさん。書籍の企画・発行、海外アーティストのマネジメントを手がけるジュウ・ドゥ・ポゥムが彼女のエージェントを始めることになり、今回、初来日を果たしたレーナさん。
――まずレーナさんが携わっている「カウニステ」というブランドのお仕事について教えていただけますか?
「カウニステ」とは2009年から主にテキスタイルやイラストの仕事をしていて、このテキスタイルのデザインも手がけました。左から、キッチンの棚をモチーフにしたもの、シナモンロールに必要な材料を描いたもの、一番右はコーヒーができるまでを描いた最新作です。フィンランド人はコーヒーが大好きなんですよ。
――モチーフも遊び心があってユニークですし、手描きのようなイラストもとても可愛いです。どのようにデザインしていかれたのでしょうか?
下描きなしで、手で自由にカットした紙のモチーフをスキャンしてPCに取り込みます。細かな点や文字など、手で切るのが難しい繊細なモチーフはペンタブレットで手描きしています。それからデザインソフトを使って調整していくんですが、ハンドメイド感がなくならないよう、リタッチしすぎないように気をつけています。
このテキスタイルは縦50cm近くあるので、このままリビングや部屋に飾ったらステキな空間になりそう。ちなみに「カウニステ」は、北欧の若きデザイナーや職人らが制作したものを販売していて、日本では全国の「エブリデイ バイ コレックス(everyday by collex)」や「イルムス(ILLUMS)」をはじめ、さまざまなセレクトショップで取り扱われている。
――他に、新宿伊勢丹にあるショップのお仕事も?
はい。昨年、新宿伊勢丹にオープンした北欧菓子専門ブランド「Fika(フィーカ)」のお菓子のパッケージデザインを手がけています。
――色合いも本当にきれいですね。こちらの子どもが描かれたイラストは何かモデルがあるのでしょうか?
毎年12月にヘルシンキで行なわれる行事をモチーフにしました。真ん中にいるキャンドルを頭に載せた女の子は「ルシア」といいます。毎年、20才以下の金髪の美しい少女がルシアとして選ばれるんです。選ばれた少女と彼女が率いる子どもたちは決められた正装をして、実際にヘルシンキの街を行進します。ルシア役の子は頭の上のキャンドルを落とさないように、そーっと慎重に歩かなければならなくて、いつも大変そうです(笑)。
――それは面白いイベントですね! モチーフもフィンランドならでは、というのがいいですね。ところで、日本でのお仕事は他にも?
大手町にある「ラ ペスケーラ マリスケリア(La Pesquera -MARISQUERIA-)」というスペイン料理のお店の壁面などのイラストも手がけました。
壁面だけでなく、ガラスにもイラストが描かれているのが印象的。レーナさんは今回の来日中、実際にこのお店を尋ねたそう。
他にもレーナさんは、エポスデザインカードのお仕事も。有料で74種類から選べるというこのカードのデザインは、世界中のアーティストが手がけていて、フィンランド人ではレーナさんだけだそう。
また、カメイ・プロアクトのマグ&タンブラーブランド「thermo mug(サーモマグ)」のアーティスト ・シリーズとして、サーモマグのイラストレーションも手がけている。こちらもモチーフや色使いがレーナさんらしく、とても可愛い! すでに新しいデザインも出来上がり、春頃には発売されるそう。
さらに、フィンランドでの最近のお仕事についても教えてくれた。「MINNA PARIKKA」という靴のブランドのショップディスプレイで、やはり手描きのイラストをシールに描いてカットする手法で制作したそう。しかもお店に貼る作業も自らが行なったというからすごい。「MINNA PARIKKA」の靴には動物をモチーフにしたデザインがあるとのことで、ディスプレイもさまざまな動物が追いかけっこしている様子を描いたという。
――すでに日本の企業との仕事も順調なようですが、そもそもレーナさんがデザイナーになったきっかけは、どんなことからだったのでしょうか?
カレッジ在学中、アートのクラスをとっていたのですが、そのときの男性の先生が私の作品を気に入ってくれていて。私自身は言語に興味があったので将来は通訳になろうなどと考えていたんですが、先生に「君は才能があるから、アート系の大学を受けてみないか」と勧められて受けたのがきっかけです。そして受かってからの5年間、2007年までデザインを学びました。もし彼がいなかったら、私はまったく別の仕事をしていたと思います。
――それは意外! ところで普段、どんなことからインスピレーションを受けますか?
いつでも、どこでもです(笑)! カタチやカラーのコンビネーションが良いもの、本当にあらゆるものから受けますね。
――日本でもインスピレーションを?
もちろん、たくさん受けました。道を歩いているとステキなショップばかりですし、パッケージもとにかく可愛いものが多いですよね。日本のスーパーマーケットは私にとって天国のよう(笑)。これもいい、あれもいいって、買うまでにすごく時間がかかってしまいました。あとフィンランド人はあまり使わないのですが、日本はパステルカラーをよく使っている気がします。ピンクの家もあったり、とてもいいと思います。
――今回が初来日とのことですが、日本の印象は?
フィンランド人とどこかフィーリングが似ているところがあると思います。あと礼儀正しい人が多いですよね。電車の中でもみなさん静かで、とてもいいなと思いました。静かな環境が私自身、好きなので。街もきれいですし、とにかく居心地がいいです。
――滞在中はどんなところに行かれましたか?
トーキョーデザインウィークや、渋谷ヒカリエにある「D&Dデパートメント」にも行きました。ギャラリースペースや美しいハンドメイドのものがあって、とても良かったです。六本木の森タワーにも行ったのですが、太陽が沈む瞬間が見られて素晴らしかったです。あとは日本人の友人が勧めてくれた吉祥寺も良かったですし、表参道のエリアもやはりいいですよね。コーヒー好きの私は「OMOTESANDO KOFFEE」というお店がとても気に入りました。
2週間の滞在中、日本のクライアントに初めて会えたことも嬉しかったという。そしてオフの日はさまざまなところに出かけ、刺激を受けたそう。食べ物もお寿司をはじめ、日本食を中心に楽しんだとか。流暢な英語で、気さくにいろいろな話をしてくれたレーナさん。「日本でも新しいプロジェクトの予定がどんどん増えたら嬉しい」と語っていたけれど、これからますます彼女の作品を目にする機会は増えそう! ぜひ、楽しみに待っていたい。
(田辺 香)

彼女の名前はレーナ・キソネンさん。書籍の企画・発行、海外アーティストのマネジメントを手がけるジュウ・ドゥ・ポゥムが彼女のエージェントを始めることになり、今回、初来日を果たしたレーナさん。
早速、事務所におじゃまし、レーナさんがデザインした作品を見せてもらいながら、仕事のこと、また日本の印象などについて、いろいろお話をうかがった。
――まずレーナさんが携わっている「カウニステ」というブランドのお仕事について教えていただけますか?
「カウニステ」とは2009年から主にテキスタイルやイラストの仕事をしていて、このテキスタイルのデザインも手がけました。左から、キッチンの棚をモチーフにしたもの、シナモンロールに必要な材料を描いたもの、一番右はコーヒーができるまでを描いた最新作です。フィンランド人はコーヒーが大好きなんですよ。

――モチーフも遊び心があってユニークですし、手描きのようなイラストもとても可愛いです。どのようにデザインしていかれたのでしょうか?
下描きなしで、手で自由にカットした紙のモチーフをスキャンしてPCに取り込みます。細かな点や文字など、手で切るのが難しい繊細なモチーフはペンタブレットで手描きしています。それからデザインソフトを使って調整していくんですが、ハンドメイド感がなくならないよう、リタッチしすぎないように気をつけています。

このテキスタイルは縦50cm近くあるので、このままリビングや部屋に飾ったらステキな空間になりそう。ちなみに「カウニステ」は、北欧の若きデザイナーや職人らが制作したものを販売していて、日本では全国の「エブリデイ バイ コレックス(everyday by collex)」や「イルムス(ILLUMS)」をはじめ、さまざまなセレクトショップで取り扱われている。
――他に、新宿伊勢丹にあるショップのお仕事も?
はい。昨年、新宿伊勢丹にオープンした北欧菓子専門ブランド「Fika(フィーカ)」のお菓子のパッケージデザインを手がけています。
中身はパッケージごとに異なる北欧地方の伝統的なクッキーです。定番でずっと売られているもの以外に限定品もあり、ここには現在販売していない商品のパッケージもあります。

――色合いも本当にきれいですね。こちらの子どもが描かれたイラストは何かモデルがあるのでしょうか?
毎年12月にヘルシンキで行なわれる行事をモチーフにしました。真ん中にいるキャンドルを頭に載せた女の子は「ルシア」といいます。毎年、20才以下の金髪の美しい少女がルシアとして選ばれるんです。選ばれた少女と彼女が率いる子どもたちは決められた正装をして、実際にヘルシンキの街を行進します。ルシア役の子は頭の上のキャンドルを落とさないように、そーっと慎重に歩かなければならなくて、いつも大変そうです(笑)。

――それは面白いイベントですね! モチーフもフィンランドならでは、というのがいいですね。ところで、日本でのお仕事は他にも?
大手町にある「ラ ペスケーラ マリスケリア(La Pesquera -MARISQUERIA-)」というスペイン料理のお店の壁面などのイラストも手がけました。

壁面だけでなく、ガラスにもイラストが描かれているのが印象的。レーナさんは今回の来日中、実際にこのお店を尋ねたそう。
いつかぜひ、私も実物を見てみたい!

他にもレーナさんは、エポスデザインカードのお仕事も。有料で74種類から選べるというこのカードのデザインは、世界中のアーティストが手がけていて、フィンランド人ではレーナさんだけだそう。

また、カメイ・プロアクトのマグ&タンブラーブランド「thermo mug(サーモマグ)」のアーティスト ・シリーズとして、サーモマグのイラストレーションも手がけている。こちらもモチーフや色使いがレーナさんらしく、とても可愛い! すでに新しいデザインも出来上がり、春頃には発売されるそう。

さらに、フィンランドでの最近のお仕事についても教えてくれた。「MINNA PARIKKA」という靴のブランドのショップディスプレイで、やはり手描きのイラストをシールに描いてカットする手法で制作したそう。しかもお店に貼る作業も自らが行なったというからすごい。「MINNA PARIKKA」の靴には動物をモチーフにしたデザインがあるとのことで、ディスプレイもさまざまな動物が追いかけっこしている様子を描いたという。

――すでに日本の企業との仕事も順調なようですが、そもそもレーナさんがデザイナーになったきっかけは、どんなことからだったのでしょうか?
カレッジ在学中、アートのクラスをとっていたのですが、そのときの男性の先生が私の作品を気に入ってくれていて。私自身は言語に興味があったので将来は通訳になろうなどと考えていたんですが、先生に「君は才能があるから、アート系の大学を受けてみないか」と勧められて受けたのがきっかけです。そして受かってからの5年間、2007年までデザインを学びました。もし彼がいなかったら、私はまったく別の仕事をしていたと思います。
――それは意外! ところで普段、どんなことからインスピレーションを受けますか?
いつでも、どこでもです(笑)! カタチやカラーのコンビネーションが良いもの、本当にあらゆるものから受けますね。
――日本でもインスピレーションを?
もちろん、たくさん受けました。道を歩いているとステキなショップばかりですし、パッケージもとにかく可愛いものが多いですよね。日本のスーパーマーケットは私にとって天国のよう(笑)。これもいい、あれもいいって、買うまでにすごく時間がかかってしまいました。あとフィンランド人はあまり使わないのですが、日本はパステルカラーをよく使っている気がします。ピンクの家もあったり、とてもいいと思います。
――今回が初来日とのことですが、日本の印象は?
フィンランド人とどこかフィーリングが似ているところがあると思います。あと礼儀正しい人が多いですよね。電車の中でもみなさん静かで、とてもいいなと思いました。静かな環境が私自身、好きなので。街もきれいですし、とにかく居心地がいいです。
――滞在中はどんなところに行かれましたか?
トーキョーデザインウィークや、渋谷ヒカリエにある「D&Dデパートメント」にも行きました。ギャラリースペースや美しいハンドメイドのものがあって、とても良かったです。六本木の森タワーにも行ったのですが、太陽が沈む瞬間が見られて素晴らしかったです。あとは日本人の友人が勧めてくれた吉祥寺も良かったですし、表参道のエリアもやはりいいですよね。コーヒー好きの私は「OMOTESANDO KOFFEE」というお店がとても気に入りました。

2週間の滞在中、日本のクライアントに初めて会えたことも嬉しかったという。そしてオフの日はさまざまなところに出かけ、刺激を受けたそう。食べ物もお寿司をはじめ、日本食を中心に楽しんだとか。流暢な英語で、気さくにいろいろな話をしてくれたレーナさん。「日本でも新しいプロジェクトの予定がどんどん増えたら嬉しい」と語っていたけれど、これからますます彼女の作品を目にする機会は増えそう! ぜひ、楽しみに待っていたい。
(田辺 香)
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