しかしそれも仕方がないところがある。なぜなら政策立案に携わる人たちが、ママたちの現状をきちんと理解できないからだ。それはいびつな日本の男性社会のせいだけではない。実は出産経験のある女性議員にも、アドバイスを与える有識者にさえもママたちの現状を伝えるのは至難の業なのだ。
なぜか? それは出産・育児が大変すぎるからだ。大変すぎるから、体験を記録している余裕のある人があまりいない。次から次へと新たな大変さが押し寄せてくるので喉元すぎれば、時にいい思い出という風に形を変えながら、忘れてしまう人が多い。
では出産・育児のリアルを知るにはどうすればいいのだろうか? 答えは簡単だ。川上未映子の『きみは赤ちゃん』(文藝春秋)を読めばいい。
『きみは赤ちゃん』は芥川賞作家である川上が自身の妊娠から出産、1歳までの子育てを詳細に記した出産・育児エッセイだ。今年の7月に発売されて以来、読者たちの大反響を呼び、出版不況が叫ばれる中、重版を重ねあっという間に7刷を数えている。
「読者のボリュームゾーンは妊娠中の方や育児中の女性です。『感動したけど、同時に辛かった時期がフラッシュバックされて泣いてしまった』という方が多いですね」(文藝春秋・武藤旬氏)