現在『ベイマックス』が劇場公開中。
多くの人が、言います。

思っていたのと違った!と。
嬉しそうに。
 
●「BIG HERO 6」が「ベイマックス」になったいきさつ
まず、日本版の広告とトレーラー。
「ベイマックス」は本当に広告詐欺映画なのか
優しく包んでくれる、白いふわふわなロボット。

「ベイマックス」予告日本版
キャッチは「あなたの心とカラダを守ります」「”優しさ”で世界を救えるか?」
ロボットと少年の友情物語風です。
 
一方本家アメリカ版。
「ベイマックス」は本当に広告詐欺映画なのか
正式タイトルは「BIG HERO 6」

「BIG HERO 6」予告アメリカ版
完全にヒーロー物のノリ。
ベイマックスがつけているのは、ヒロの作ったアーマーです。
 
どちらも正しいです。
主軸は「BIG HERO 6」としてのアクション。
これに「ベイマックスとの交流」を混ぜあわせたエンタテインメントです。
原作は「スパイダーマン」「アイアンマン」「X-MEN」のマーベル

日本ではほぼ知られていない、原作のアメコミ「BIG HERO 6」。

そのままの宣伝ではまず売れない。
映画自体は、見ればすぐに、日本人好みのヒーローアクション映画なのはわかる。
舞台もSF日本ですし。
 
Twitterが拍車をかけました。
見た多くの人が「『ベイマックス』の広告は詐欺だ、いい意味で」「『ベイマックス』は『グレンラガン』的だ」とツイート。
あまりのギャップに、人に言いたくなる。
ディズニーと映画に興味なかった層が「じゃあ見に行こうかな」。

子供連れやカップルは、「アナ雪」風だし、ディズニーだし、と鑑賞に。
コアなファンはTwitterやFacebookの「詐欺」評判を見て、鑑賞に。
結果、みんなが楽しめる作品になりました。

ディズニーとマーベルの調和。ネットでの評判は上々。

原作ファンだけはちょっと不満かもしれません。改変されまくってますから。
でも元々マイナーなコミックが、ここまで有名になったのです。
是非観た人に「実は原作はハニーレモンのポケットは無限大にものが入るんだぜ」とか教えてあげてください。
 
●映画の見所5
「ベイマックス」が話題の理由をチェックしてみます。

1・ベイマックスのデザインの変更
ディズニーが初めて作ったマーベル原作作品「BIG HERO 6」。
最も大きく手を入れたのは、全員のデザイン。
原作のマンガのデザインはこちら。
「ベイマックス」は本当に広告詐欺映画なのか
2008年版「BIG HERO 6」。1998年版はシルバーサムライ(「X-メン」のウルヴァリンの宿敵)などが入っていて、メンツがちょっと違います。

前から、メガネの子がヒロ(主役)、金髪のハニーレモン、立っているのがゴーゴータマゴ、刃物を持っているのがワサビ・ノー・ジンジャー、怪獣がフレッド、そしてロボットがベイマックスです。
ヒロ以外ほとんど別物です。

簡単にまとめると
・ハニーレモン → 金髪美女から、メガネの科学オタクの女子に。
・ゴーゴータマゴ → 暴走族で逮捕されていたスケバンから、大学生のちょいワル研究者に。

・ワサビ・ノー・ジンジャー → 寿司職人から、ドレッドの真面目なにーちゃんに。
・フレッド → 怪獣の幻影を出せるアイヌ人から、怪獣オタクの青年に。
各々の能力も、ほぼ別物にアレンジ。
スーツは、日本の戦隊物に近くなっています。

女性としてのセクシーさがウリだったハニーレモンとゴーゴータマゴ。海外の人気キャラです。
映画版ではセクシーなデザインは、全て排除されました。
男らしく・女らしく、がない。

そしてベイマックス。
ガチガチのロボットを、まるっこい風船に変えてしまいました。
(ちなみに原作ではドラゴン形態もあります)

となりのトトロ体型とでも名づけますか。
ぽっちゃり丸いものは、人間の心を和ませる効果バツグン。

Twitterを見ていると、風船ベイマックスに抱きついている写真が多数アップされています。

ちゃんと後半は、原作のアクションを活かすため、アーマーを着せてロボット感も出しています。
ベイマックスがらみのの色の変化は注目のポイント。
特にアーマー着脱のタイミングはよく計算されているので、意識してみると面白いです。

小さい部分としては、「ゴーゴータマゴ」を「ゴーゴー」に、「ワサビ・ノー・ジンジャー」を「ワサビ」に日本語で変更しています。
シリアスなシーンで「タマゴ」とか言われたら、気になって集中できないもんね。

2・中途半端な日本
舞台は「サンフランソーキョー」という日本とサンフランシスコのハイブリッドです。
アメリカの人がイメージする日本なので、どこかおかしい。
看板一つ一つ、じっくり見てください。

特にアーマー・ベイマックスに乗ってヒロが町を飛び回るシーン。
「ブレードランナー」みたいになってます。
あるいは「ニンジャスレイヤー」のネオサイタマです。

ニンジャヘッズには見どころしかないような作品なので、必ず見るように、いいね?

3・登場キャラはみんなオタク
出てくる5人の青年、全員科学オタク
主人公のヒロは、科学の天才。ここは原作通り。
残りの大学生が、研究室にこもる理系学生という設定に変わっています。
フレッドに至っては、単なる怪獣オタク。

序盤、とある試合をするシーンが入ります。
これが……すげーオタクっぽい。そういう試合かー! 昔漫画で読んだわ。今アニメでも人気だわ。

特別なチカラを持ったミュータントは一人もいません。
みんな、自分たちの研究を元に、作ったもので戦います。
「特別なかっこよさ・かわいさ」がベイマックス以外にない。

ラストのさりげないセリフ、重要なので聞き逃さぬよう。

4・敵や悪はない
完全悪が存在しません。
ある理由でBIG HERO 6は飛び出していきます。
けれど彼らの理由は「倒すこと」ではない。

他の4人がヒロの先輩格になることで、物語はバランスを保っています。
そういう意味では「BIG HERO 6」というタイトルは正しい。
意図的に、力ではなく頭脳を使ったアクションに特化されています。
ただ、戦う相手の絶望的な強さ描写はさすがです。
ヒロの感情がたかぶった時ほど、ベイマックスが心のケアをする。
だから「ベイマックス」というタイトルも正しい。

5・ロボットへの愛
ヒロはずっとベイマックスと一緒。
彼が家にいて困っている時も、戦闘中も、空をとぶときも、いつだってベイマックスは一緒。

ベイマックスには、一切AIがない(医療用ロボットの機能にあるものを追加しただけ)のがポイント。
人間は、完全に機械としてのロボットに、どこまで感情移入できるのか。


あちこちで飛び交う「これは天元突破だ」「やっぱマーベルじゃないか」「燃え映画だ」という声。
信じていいです。
「あなたの心とカラダを守ります」
信じていいです。(正確には「あなたの健康を守ります」)

ぼくが見た回では、子どもたちがもう大喜びでキャッキャと笑ってみていました。
アメコミヒーローの次世代を担うファンが今、生まれています。

あ、マーベル映画といえばおなじみのアレもありますので、お楽しみに。

(たまごまご)
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