「東京コロッケ」という屋台を見たことがあるだろうか。
私はつい先日、初めてそれを目にした。
大阪市北区にある「大阪天満宮」に初詣に行ったときのこと。
こんな屋台である。
東京にはないグルメ「東京コロッケ」を知っていますか?

200円払うと串を渡され、すでに揚がっている「東京コロッケ」を7個刺してソースをつけて持って行くというシステム。

これが東京コロッケか! 東京では見かけたことがない……。
東京にはないグルメ「東京コロッケ」を知っていますか?

屋台の脇ですぐ食べる。うむ。
美味しい。中身はジャガイモのみ。一つが小ぶりなので、コロッケというより丸いポテトフライを食べているような感じだ。あっさりしたソースがうまい。

食べ終えて屋台の方に、この食べ物がなぜ「東京コロッケ」という名前なのか聞いてみた。「ごめんな……。
わしも知らんねん」とのこと。

調べてみると「東京コロッケ」の屋台は、大阪の北部と大阪に隣接する兵庫県のごく一部に存在し、十数年前までは多数あったが、今はかなり数が減っているらしい。昔は1串が100円で、屋台に据え付けられたパチンコ台でパチンコ玉をはじくことによって串に刺せるコロッケの個数が変動するというゲーム性もあり子供に大人気だったとのこと。

今回、東京コロッケについてよく知る巴大樹氏に話を伺うことができた。巴氏は大阪の中津で「シカク」というミニコミ・ZINEショップを営んでいる方で、そのお店で東京コロッケに関するイベントを開催し、自分で"東京コロッケ本"を制作するほどの熱烈なファン。

――お祭りの中での東京コロッケの屋台はどういった存在だったのでしょうか
「僕の小中学校時代(1995年~2000年ごろ)の大阪の話なので主観が入りすぎているかもしれませんが、東京コロッケは縁日のシンボルといっても過言ではなかったです。
子供が祭りにいって使える金額なんてせいぜい千円です。そのなかでたこ焼き、お好み焼き、焼きそばなど普段家でも食べれるものを買う人は本当に稀でした。東京コロッケはお祭りの時しか食べられないものだし、100円という安さなので『とりあえず1本いっときますか』という感覚で買っていました」

――手軽に楽しめる感じが人気だったのですね
「シェアしやすいところも良いんです! 子供にとって縁日は好きな子と学校外で会える絶好の機会なんですよね。でも年頃の子供はだいたい同性でかたまるじゃないですか。それを打破するのが『東京コロッケ一個ちょうだい』という一言なんですよね。だから東京コロッケを買っては好きな子が通り過ぎるまでゆーっくり食べてました。
そういうのも相まって東京コロッケ屋の前はいつも人溜まりができてましたね」

――ナンパにも使える屋台だったわけですね。昔はたくさんあった屋台が今では数少なくなってしまったというのは本当ですか?
「年配の人たちに聞くと昔はもう少し店舗があったそうですね。昔は100円払うとパチンコ玉が1個もらえて、備え付けのパチンコ台で、入った所によってもらえるコロッケの個数が変わるっていう方式だったと聞いています。今もそのパチンコ台を看板にしているところもありますね。

東京にはないグルメ「東京コロッケ」を知っていますか?

僕が東京コロッケについて調べていた数年前には1店舗にまで減ったとの噂でしたが、今は3店舗は確認できているので、また波が来ているのかもしれないです」

――なぜ「東京コロッケ」という名前なんでしょうね
「諸説あるのですが、東京の縁日ではソースせんべいのように"当て物形式"でもらえる個数が決まるという屋台があって、大阪にはその文化がなかったので、"当て物"=東京というところから『東京コロッケ』となった説と、ただ単に『東京』とつければハイカラ、ハイソなものという感覚があって、"一口サイズでおしゃれで新しい食べ物"というイメージを売り出すためにその名になったという2説が有力です。といっても確証はなく現在も研究中です」

――巴さんは「東京コロッケ」のレシピを再現されたとのことですが、教えていただけますでしょうか?
「今の東京コロッケはジャガイモパウダーを使っていたり、店舗によって衣をつけない店舗もあるので一概には言えませんが、僕が食べていたお店の味のレシピはこんな感じです」

【材料】
イモ(好きなだけ)/細目パン粉(適量)/揚げ油(適量)/大黒屋の「元祖 なにわ名物 串カツソース」のソース

【作り方】
1、イモをゆでてつぶします
2、ビー玉大に丸め、細目パン粉を敷いたバットの中を転がします
3、串に刺して180度できつね色になるまで揚げます

※大量に作るときは、一つずつちぎって丸める作業が面倒ですから、マッシュ状にしたイモに金網をあて、ニュルっと出て来た部分をヘラでカットし、一定量のかたまりになったものを丸めるのがおすすめです。


「ソースについてはいろいろ研究したんですが、甘みやまろやかさなどを考えて自作した結果、この大黒屋さんの串カツソースが一番答えに近いということにたどり着きました。ぜひ皆さん、ご家庭でも作ってみてください!」

大阪に足を運べない方も、これで「東京コロッケ」を味わうことができる! 素朴で飽きのこない味なので試してみてください!

今回取材に協力してくれた巴さんのお店「シカク(大阪市北区中津3-17-12)」は、一般の書店では手に入らないマニアックなテーマの手作り本を多数取り扱っている魅力的なお店。通販も行っているのでぜひウェブサイトをチェックしてみてください。(残念ながら「東京コロッケ」の本はすでに絶版とのこと)
(スズキナオ)