みなさんは「駅弁」と聞いたら何を浮かべるだろうか。焼肉弁当に釜飯弁当、イカ飯や海鮮丼などなど。
最近では化学反応を使って温める加熱機能付き容器のものもあり、できたてあつあつの状態を楽しむこともできる駅弁の世界。それは常に変化し続けているようだ。

【弁当の定番と言えば「幕の内弁当」】


筆者が「駅弁」と聞いた時、まず思い浮かぶのは「幕の内弁当」。
白いご飯と玉子焼きにかまぼこ、煮豆などと一緒に焼き鮭などの魚料理が添えられている幕の内弁当は、古くから日本人に馴染んだ定番の味だ。
ところで、みなさんも一度は考えたことがないだろうか。どうして“幕の内”弁当なのか、と。その答えは、“幕”の一文字にある。


【“幕の内”ってどういう意味?】


この“幕”の文字はもともと、戦場の陣営の幕を意味するものだと言われている。そこから“幕の内”と言う時は、野戦弁当のことを意味してたようだ。だが当時は、武士が短時間で腹がふくらせるのが目的の、ごま塩を付けた程度の握り飯でしかなかった。
それが弁当の形になったのは、庶民の文化が栄えた江戸後期のこと。“幕”の文字が芝居の“幕”と重なったためなのか、芝居見物のときにたべる弁当として使われるようになった。その時代、たまご焼きやかまぼこ、魚料理は大変なご馳走であり、幕の内弁当はそんなご馳走が詰まった夢のような弁当として親しまれてきたそうだ。


それから時代は流れ、今ではお弁当の定番として愛されている幕の内弁当。なかには、代わり映えのない味に飽きてしまっている人もいるかもしれない。そんなときは、芝居を楽しみにご馳走を頬張る江戸の息を感じながら、ひとくち頬張ってみてほしい。きっと、その味わいは変わってくるはずだろう。
(ろっくまん)