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NPOでもお金をとっていいのか、宣伝活動をしていいのか。知らないと恥ずかしい「NPOの教科書」

NPOでもお金をとっていいのか、宣伝活動をしていいのか。知らないと恥ずかしい「NPOの教科書」
NPO歴17年のベテランと五体不満足の著者がNPOの基礎を徹底解説
NPOの活動について最近よく見聞きするようになりました。実は自分もライター業のかたわら、NPOの代表をやってます。「特定非営利活動法人国際ゲーム開発者協会日本」通称IGDA日本。ゲーム開発技術の共有とコミュニティ育成を通した社会貢献がミッションで、被災地支援を目的とした福島GameJamの開催などは活動の一つです。2002年に任意団体として発足し、2012年に東京都からNPO認定を受けました。

もっともNPOって言葉は知っていても、実態は良くわからない人が大半ではないでしょうか。実はNPOの「中の人」である自分もその1人。そんな中、かっこうの入門書「初歩的な疑問から答える NPOの教科書」が出版されました。著者は一般財団法人ジャパンギビング代表理事でNPO法人ドットジェイピーの理事長もつとめる佐藤大吾氏と、書籍「五体不満足」で有名な乙武洋匡氏。2人の対談形式で、NPOの基礎が丁寧に解説されています。

1.NPOでも、お金をとっていい
たぶん多くの人が誤解しているのが、「NPOでも活動に際して対価を徴収できる」点ではないでしょうか。ではNPOと一般の企業、すなわち営利活動と何が違うのか。それは利益の再分配ができないということです。株式会社であれば株の配当などを通して、剰余金を出資者間で再分配できます。これがNPOではできません。剰余金は活動の原資にしてください、ということなんです。

2.NPOでも給与が出せる
これまた誤解されているのが、NPOでも(収入次第で)給与が出せるということ。収益源は大きく会費・寄付金・補助金&助成金・自主事業収入・委託事業収入で、NPOの職員として生活している人も少なくありません。ちなみに日本で最大規模のNPOは子どもの貧困問題を解決する「ワールド・ビジョン・ジャパン」で、年間収入は約45億円。ちょっとした中小企業レベルですね。

もっとも日本では、NPOの大半で財政基盤が乏しく、本書でも1人あたり人件費は200万円以上、250万円未満がボリュームゾーンとなっています。ちなみにIGDA日本でも人件費は払っていません。ヒト1人雇うって大変なんですよ。

こうした疑問が生まれる背景には、たぶん「寄付金が必要な人に直接わたらず、途中でピンハネされるなんて許せない」という社会感情があるんだと思います。ただし個人や団体が継続的な活動を行っていくのであれば、それ相応の収入が必要になるのは当然。NPOの財務情報は自治体などで開示が義務づけられているので、活動内容の大きな目安になるでしょう。

3.なんでNPOが必要なの? 企業や行政サービスで十分では?
ところが、なかなかそうはいかないんですね。企業は利潤の追求が本分。行政も税金を投入する以上、「広く薄く」にならざるを得ない。しかも不況の影響などで税収入が減少する中、ピンポイントで的確な効果を上げることが難しくなっています。身近なことなら、自分たちで活動して解決した方が早い。そんなときに便利な枠組みの一つがNPOなんです。

本書でも「同じ悩みを持った人たちが集まって、少しずつお金を出し合って問題を解決する」ことがNPOのモデルとして紹介されています。いわば自治会の拡大版みたいなもんでしょうか。もっとも草の根で始まった活動でも、規模が大きくなると支障が出てくる。寄付金一つとっても、1人がもらう金額が年間で110万円を越えると贈与税が発生する。そこで法人格が必要になるというわけです。きっかけになったのが阪神・淡路大震災で、現在NPOは5万団体もあるそうです。

4.NPOに必要なのはPR?
目から鱗だったのがこれです。本書では街の清掃活動を行うNPO「グリーンバード」の例で説明されています。いくらゴミを拾って街をきれいにしても、またゴミを捨てられれば同じです。そこでゴミ拾い活動の仲間を増やせば、ゴミの量におどろいたり、怒ったりして、その人はゴミを捨てなくなる。つまりゴミ拾いに参加してもらうことが、環境美化の教育につながる。だから宣伝活動が必要だというわけです。

ポイントは受益者負担という考え方。一般のサービスではお金を出す人とサービスを受ける人が一致しています。しかしホームレスに炊き出しを行う場合、お金を出す人とサービスを受ける人は違います。もっといえば、そうした社会問題が生まれない状況を作り出すことが重要です。そのためには、現状を多くの人に知ってもらって、支援者を増やしていく必要がある。「ずばり、(NPOには)PRが得意な人が向いています」と佐藤氏は言い切ります。

5.NPOって何が楽しいの?
企業と違い、NPOには必ず「困っていること」があると佐藤氏は説明します。そうした問題を解決して、直接ありがとうと言ってもらえる。それが最大のやりがいに繋がっているというのです。東日本大震災で泥かきをして、家を再び住めるようにしたら、涙を流して喜んでくれた、などは好例。本書では「笑顔が近い」という表現がされており、良い言葉だなと思います。

本書を読んであらためて、NPOは「自分たちで自発的に活動して(ボランティアワーク=報酬の有無とは無関係)、社会をよりよくするための活動」をしやすくする仕組みなのだ、という認識を持ちました。実際、NPOで働きたい大学生も増えているんだとか。NPOって何だろう、ちょっと興味ある、くらいの軽い気持ちの人に、さらっと読んでもらいたい一冊です。
(小野憲史)

ライター小野憲史が動画で解説NPO

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