キス動画の過激さが注目されてメディアで取り上げられる機会が増えてきたが、そもそもなんでこんなに人気なんだろう。女子中高生がメインユーザーのミクチャ(こう略すらしい)を10代でも女子でもない筆者が、500個以上ラブラブな動画を見て考えみた。
ユーザーは恋人ありが60%
まずはミクチャの媒体資料からユーザー層を確認しておこう。ユーザーの中心は女子高校生で利用者の81%を女性が占め、SNSでやりとりする友達の数が100人を超えるユーザーが半数だという。しかも、「現在つきあっている彼氏や彼女いますか?」に60%が「YES」と答えている。強引に言い換えてしまえば、友達が多くて彼氏もいる「リアルが充実したスクールカースト上位層」といったあたりだろうか。
実際、「LOVE」カテゴリの動画のサムネイルに表示される男女の容姿は整っていて、流行をおさえたオシャレな服装だ。動画の中身は10代の学生カップルが抱き合ったりキスしたり、ディズニーランドでデートをしたりといったもの。一昔前だったら公開されない青春のプライベートなやりとりを見せられると、どこかから黒い感情が湧き上がってきて5個ぐらい動画を再生するたびに休憩が必要だった。
キス動画以外にも
・ふたりだけの制服姿の勉強デート
・部屋でお菓子を「あーん」としあう
・寝顔をそっと撮影
・砂場に彼氏の名前を書く
など中高生カップルのデート風景は破壊力が高い。ユーザーは気に入った動画を「Like」ボタンを押し、その数が多いほど上位に表示されやすくなる仕組みらしく、結果的に容姿の良いカップルのイチャイチャばかりが目に付く。
だが、人間の慣れはすごいもので100個以上のカップル動画を再生したあたりから、「またこのパターンか」と比較的冷静に眺められるようになってくる。
どこか結婚式ムービーに似ているミクチャ
そして動画の視聴が300個を超えたところで、ミクチャの動画が「何かに似ている」とぼんやり頭に引っかかっていた謎の正体がわかった。
ミクチャといえばキス動画のイメージが強いが、実はアップされている動画の多くは静止画を組み合わせたもの。ムービーといってもどちらかといえばスライドショーに近い。「付き合って半年記念」、「付き合って1年記念」という名目で、過去のキス写真やプリクラを集めて、BGMに女性のせつない気持ちを歌ったJ-POPをのせている。
「HRナビ」に掲載の記事「10代がハマるMixChannelに見る、熱量の高い『顔出しコミュニティ』の作り方」よると、サービス開始前の調査で女子高生が普段あまり動画を撮影しないとわかったという。
「動画はあまり撮影しないとはいえ、写真の撮影は行っている。画像が数多くあるのであれば、スライドショーは作成できると考え、MixChannelには初期段階からスライドショー的な機能を加えていた」
結婚式で上映される動画とミクチャの動画の構成が同じとして捉えると、いろいろと理解しやすくなってくる。「祝福されたい」「うらやましいと言ってもらいたい」という願望がどちらにも共通しているのだ。いわゆる「女子の夢」を視覚化していると言っていい。
ラブラブな動画のシチュエーションはほとんど「少女マンガ的」だし、思春期の中高生男子が考えそうな性的に直接的な表現はほぼない。アプリで美肌加工やデコりまで施せるから妄想の純度を保ったまま動画にできる。女子中高生はミクチャで動画を見ると「彼氏がほしくなる」そうだ。
(小島カズヒロ)