
仲間に指示を出すセリフが増えました
──「攻殻機動隊ARISE」に続く、「新劇場版」での草薙素子役はいかがでしたか?
坂本 私が素子役をやらせてもらっているのはここ2年ぐらいですが、エピソードを重ねるごとに素子はどんどん成長し、周囲との人間関係も変わってきています。自然と私自身が素子から受ける印象が変わってくるというところはありますね。
──とくに変わったなと感じるのはどのあたりでしょう。
坂本 最初の頃はすぐ、ひとりで解決しようとするんです。でも、少しずつリーダーとしての自覚が生まれてきて、周囲にパスを回すようになってくる。新劇場版の素子は「あれ、どうなってる?」「これやっておいて」など、指示を出すセリフがすごく増えました。仲間との信頼関係も深まり、仕事を任せられるようになったことの現れだとも思いました。

──「攻殻機動隊ARISE」で素子役に抜擢された頃に比べると、プレッシャーはだいぶ軽減されました?
坂本 やっぱり緊張はします(笑)。ただ、演じていく中で次第に解き放たれていくというか。今回は最終章に当たる作品だったということもあり、おそらく私が草薙素子を演じるのはこれが最後になるだろうという思いもありました。
●坂本慎太郎さんと言葉の好みが似てるんじゃないかな
──今回の映画では「坂本真綾 コーネリアス」名義のテーマソングも話題です。
坂本 小山田圭吾さんがこれまで手がけてこられた「ARISE」シリーズの楽曲はどれも大好きなものばかりでしたし、坂本慎太郎さんに歌詞を書いてもらえるというのもすごく楽しみでした。坂本さんは「攻殻機動隊」という作品の世界観をしっかり理解して、ストーリーに重なり合うように歌詞を書いてくれました。言葉選びって感覚的な好みがはっきり出るところだと思うんですが、私には、坂本さんの紡ぐことばがすごく響くし、歌っていてもしっくりくるんです。

──真綾さんが好きだと感じる「言葉」は、たとえば……?
坂本 時代に左右されない言葉かな。流行っている言葉や話しかたがその都度生まれては消えていく一方で、どの時代にでもフィットする日本語もあると思うんです。歌にするなら10年後、20年後も古びない言葉がいいなって。日本語って語彙も多くて、細かいニュアンスまで表現できる。俳句や短歌のようにごく少ない言葉数でも驚くほどたくさんの“景色”を伝えられるのが日本語のすごさであり、面白さでもあるなと感じています。
*映画最新作「攻殻機動隊 新劇場版」(大ヒット公開中)にあわせて、7月4日深夜0時からはアニメ「攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG」がアニマックスで放送される。
後編に続く
(島影真奈美)