一方、ゆったり優雅に歩くタイプへ憧れがないわけでもなく。なぜ、そんなに余裕があるんだろう? パッと見、上品にも見えますわな。
この“歩き方”を掘り下げる企画展が、日本科学未来館にて2016年4月11日まで開催されます。その名も「アルクダケ 一歩で進歩」。
監修を務めるは、歩容認証研究の第一人者である八木康史氏(大阪大学産業科学研究所所長)。
この企画展では、大きく3つの公開展示が行われる模様。では、順繰りに回って行きましょうか。まずは、こちらから。
アルクダケでわかるあなたの歩き方
録画した歩行の姿より個性を測り、「あなたの歩き方は○歳くらいです」と“歩行年齢”を計測する。
「歩行路を数回往復してもらい、その時のシルエットを参考に個性を測定。『背筋が伸びているか』『歩幅はどうか』など8つの項目で個性をグラフ化します。また、実際の年齢とは異なる“歩行年齢”も出します。
なるほど。猫背にならず、体型がほっそりしていた方が若く見えるんですね?
これ、筆者も体験してみました! 結果は、こちら。
注目は、右側の八角形のグラフ。平均値は、真ん中の正八角形だとお考えください。まず、筆者は「腕の振りの左右対称性」が高いです。歩行周期も、平均よりやや大きめ。一方、腕は平均よりもあんまり振れてません。
「平均よりも大きいと良いということではなく、平均との違いが個性です」(担当者)
結果、筆者の歩行年齢は25歳! そして、筆者の実年齢は37歳!! ずいぶん、若く推定していただけました。もちろん“歩行年齢”なので、実際の年齢とは必ずしも合致しません。歩き方や体型の特徴も加味され、これは導き出されています。また、この測定結果はカードにして持ち帰ることもできます。
「展示横の画面では6人分の歩行映像が確認でき、比較することができます。
歩容鑑定システム
これは、犯罪捜査時の鑑定に使うシステムだそう。歩き方で、目星をつけた本人かどうか鑑定できます。
「DNAや指紋のデータをとることは、大変です。でも歩容なら、40~50メートル離れた人でも認証できる。遠隔から個人を識別する唯一の生体認証で、他の技術ではできない最大のアドバンテージです。防犯カメラで撮られた犯行時の映像と秘匿撮影された映像の間で認証を行い、犯人であるかどうかを検証します」(八木氏)
なんとこのシステム、平成25年から科学警察研究所にて試験運用が実施されているとのこと!
アルクダケでわかるあなたの健康度
「体験者が足踏みをしている姿を計測し、同時に計算問題を答えてもらいます。『デュアルタスク』という認知症のリハビリテーション等に活用される技術でして、脳の健康度を計測します。人間って、同時に2つの動作はなかなかできません。認知度が進むと余裕がなくなるので、この計測を行うと足踏みが止まったりします。すなわち2つのタスクを与えて出来栄えを観察することで、脳の健康度を測定します」(八木氏)
これも、もちろん体験しました! まず定位置で、15秒間の足踏みをします。その後、問題に答えるモードにいよいよ突入。すると計算式が画面に出てくるから、提示される2つの解答例からどちらが正しいか左右に持ってるボタンで選択します。
「脳の機能が低下すると、両方の動作がだんだんできなくなってきます。
自慢していいですか? 最も難解度が高いレベルを選択したのに、全問正解してしまいました。これは、期待していいんじゃないか……!
では、判定結果のグラフをご覧ください。「Correct answers(正答率)」は、確かに高い。でも、「Speed(歩行速度)」と「Stability while thinking(計算中の歩行安定性)」は高くない。これらを参考に、“脳の健康度”は測定されるのです。そうか、これはただのクイズじゃなかったな……。でも、無事に「A」をいただくことができました!
「この展示では体験された皆様の同意を得た上で、これらの様子を記録します。そして、今後の研究開発に活かされます。約9カ月間という展示の期間中、恐らく10万人を超えるデータが得られる。これは、学術的に見ても桁違いに膨大なデータになります。そして、そこからまた未来の技術は進歩する可能性があります」(日本科学未来館 科学コミュニケーター・野副普氏)
各展示の体験終了時には「この結果を研究資料に使ってもいいですか?」と質問され、同意した人には判定結果が渡されます。
「この技術を活用すれば、例えばセキュリティゲートで自動的に鍵を開けることができますし、空港や商業施設等の広い空間で迷子の子がいないか迅速に発見できます。また不審者の特定も可能なので、次世代の科学捜査技術としても期待されています。つまり、『安全で豊かな暮らしを提供する』目的で行われている研究です」(野副氏)
“歩き方”を掘り下げると、こんなにも意義深かったんですか!
(寺西ジャジューカ)