1990年代から2000年代を代表する歌姫、といえば浜崎あゆみである。浜崎あゆみ、いや、やっぱりayuのほうがしっくりくる。
1998年に歌手デビューして以来、ayuはわたしたちみんなのayuだった。いっときは離れてしまった時期もあった。“あの頃とは変わってしまった”なんて思ったこともあった。それでも、ayuほど女子に共感を呼び、社会、いや時代全体に大きなインパクトを与えた歌姫は他にいるだろうか?

【しっぽがブームに! ファッションリーダー浜崎あゆみ】


当時幾度となく耳にした「ファッションリーダー」という言葉。このファッションという領域でayuは絶大な影響力を誇った。服装やヘアスタイルはもちろんのこと、メイクやネイル、アクセサリーまでありとあらゆるものが“ayu発信”だったことは、あの頃の彼女を知っている人であれば記憶に新しいはずだ。

例えばそう、「しっぽ」……! しっぽってなんだよ! という感じだが、あれはしっぽとしか形容できない何かだった。

2001年1月にリリースされた浜崎あゆみの代表曲のひとつ、「evolution」。そのPVで彼女が身につけていたファーチャームこそ、このしっぽの正体である。このしっぽ、デニムのベルトループなど腰まわりに付けて楽しむもので、ayuを真似てファッションに取り入れる女子が増加した。腰に大きなしっぽを付けないまでも、しっぽの形のチャームをケータイのストラップとして付けたり、学生カバンに付ける女子高生などはかなりの数いたと記憶している(※筆者が知る限り)。かくいう自分も、ピンクのケータイにしっぽストラップを付けていた。

このファーチャーム、人間のお尻から大きなしっぽが生えているように見えるため少々異様だが、筆者などは今みても「カワイイィィィ……ピギギギィ!(絶叫)」という風に感じてしまう。
カワイイ女の子からしっぽが生えているなんて、もう最高じゃないか?

また、ガン黒ギャルが街に溢れていた時代に、ギャルたちを一斉に「美白」へとシフトさせたのは、他ならぬayuの存在だったし、ほかにも、彼女が「evolution」や「UNITE!」などのPVで金髪ショートを披露すると、すぐさま女子の間で同じ髪型が流行したし……

全身ヒョウ柄を身にまとった3rdアルバム「Duty」のジャケット写真が大きな話題を呼んだように、ヒョウ柄を流行らせたのもayuだった!

【もう生き方自体がカリスマだった】


こうした表層的なファッションはもちろんのこと、ayuがファッションリーダーとして君臨した理由は、その“ファッション”の意味がライフスタイル、あるいは“ギャルの生き様“にまで及ぶものだったからだろう。
たとえばayuのちょっと鼻にかかったしゃべり方をマネする子がいた。見た目はギャルじゃないけれど、「デジデジ日記」や歌詞カードなどで披露される手書きの文字をマネる子がいた。……そんな風に、ayuは女子の生活の隅々にまで染み渡るように、たしかに存在していたように思う。
ayuの登場は、渋谷をはじめ都市全体のムード、モード、匂い……そのすべてを変容させる出来事だったのだ。

【ケモ耳とかと同じで萌えるよね】


ここで、冒頭のしっぽの話に戻ろう。
猫耳や犬耳などの通称「ケモ耳(=獣耳)」、ディズニーランドのミッキーの耳など、動物に扮するための装着アイテムは一般的に萌え要素になることが多いが、「ケモ耳」を装着してカワイイのは、なにも女子だけではない。たとえばディズニーで彼氏に耳を付けて「○○君、カワイイよ!」などと写メを撮りまくる女子を見かけるように、そして好きなアニメや漫画のキャラに耳を生やすN次創作(※二次、三次……N次創作)が多くの女子を魅了するように、獣化させるためのアイテムは男性にも萌え要素を付加することはいうまでもないだろう。

そう考えると、やはりayuの「しっぽ」も同様に、男女問わず萌え要素を付け加えてくれるアイテムだと言ってよいだろうし、“今さらダサイでしょ”などと苦笑されてしまったとしても、好きな人に付けてもらい2人でキャッキャウフフ♪ と楽しみたいアイテムであることは主張させていただきたい。

事実、しっぽブームが去ったのちにも、2010年頃になるとホストやホスト風ファッションの男性の間で「しっぽファッション」が再加熱した時期があったようだ。イカツイ感じのウォレットチェーンをジャラジャラと装備するアノ感覚なのだろうか? そこらへんはよく分からないが、いや“しっぽ男子”、悪くない。

……と思うのだが、みなさんはこの「しっぽ」どう感じるだろうか? 浜崎あゆみは今もなお日々進化し続ける自身の姿を通じて私たちを魅了してやまない。今後、再び彼女発信のトレンドが社会を席巻することはあるのだろうか。

(ヤマグチユキコ)
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