■大塚 愛 LOVE IS BORN ~9th Anniversary 2012~
2012.09.09(SUN) at 日比谷野外大音楽堂
(※画像10点)

2012年9月9日、満員の観客で埋まった日比谷野外大音楽堂は、間もなく開演の時間だというのにどこか緊張感を含んだ静寂に包まれていた。そう、この日は2年ぶりの開催となったアニバーサリーライヴ【大塚 愛「LOVE IS BORN」~9th Anniversary 2012~】開催当日。
観客が声もなく見つめるのは、目の前の、まだ誰もいないステージ。あと数分後にはそこに“彼女”が現れると思ったら、声が出ないのも当然だ。

オンタイムでバンドメンバーが登場すると、“チューリングス”と名付けられたストリングス隊による「I (ハート) xxx」でライヴは幕を開けた。しかし、そこに大塚 愛の姿はまだない。演奏が「ヒカリ」へと突入すると、先程からステージ中央に焚かれているスモークの奥にうっすらと人影が透け、懐かしい歌声が響いてきた。それでもまだ観客の多くは、そこにいるのが彼女だと信じられないといった表情をしている。それが一転、歓喜の笑顔に変わったのは「ヒカリ」を歌い終えた直後、スモークの中から現れた彼女が深く一礼し、左手を高く上げた時だった。特徴的なギターにピンと来た観客達が続々と立ち上がり、早くもクライマックスのごとく盛り上がったのは「さくらんぼ」。客席からの“もう一回!”の掛け声もブランクを感じさせない息の合いようだ。その勢いを加速させるかのように「フレンジャー」「Pretty Voice」「チケット」と、いつもならライヴ終盤に並ぶ楽曲を立て続けに披露したところで、この日初めてのMCタイム。

観客全員が今か今かと待っていると、彼女は無言でタオルを広げた。そこに書いてあったのは“久しぶりっ”というシンプルな一言。
今回のアニバーサリーツアー用に作られたグッズの一つだが、おそらくその時彼女が一番言いたかった言葉なのだろう。その想いに応えるように、会場のあちこちから「おかえりー」という声が飛ぶ。そして記念すべき第一声は「こんばんは、大塚 愛です」。続いて「ようこそ、2年ぶりの“LOVE IS BORN”ヘ。よくぞ来てくれました、ありがとう!」と再び深く一礼する姿に、彼女の帰りを待っていたファンの胸は熱くなったことだろう。

この日までの2年の間に、自ら「休んでたわけじゃないんだよ!(笑)」とアピールした通り、彼女は2作目となる絵本『ネコがスキになったキライなネコ』を上梓。この絵本と連動した作品で、購入者だけに限定配信された「ごめんね。」から、ライヴは再開された。

原曲はピアノとストリングスでしっとりとした雰囲気だったのが、今回はホーン隊も入ってカラリとした印象に聴こえた「One×Time」、王道のバンドサウンドで彩られた「ユメクイ」を挟み、ピアノ弾き語りコーナーへ突入。彼女のライヴでは欠かせないピアノでの弾き語りは、デビュー以来幾度となく目にしてきたが、久しぶりに耳にした彼女のピアノは実に感情豊か。歌詞に合わせての抑揚はもちろん、イントロや間奏といった部分でもその想いが十分に伝わってくる。なかでも「プラネタリウム」では、音色に誘われてか鳴き出した虫の声とも相まって幻想的な空間が生み出された。

弾き語りコーナーが終わるとライヴもいよいよ終盤戦に突入。
ステージにはダンサーも登場し、会場の熱気はグングンと上昇していく。そんな中、観客を驚かせたのは「ポンポン」。いつもなら歌いながら客席にボールを投げ込む彼女が、なんとエレキギターを手に見事な演奏(と、早口歌唱)を披露! 予想もしてなかった光景に観客もざわつくが、歌う前も、歌い終わった後も、そのことに全く触れないところがなんとも彼女らしい。派手な特攻で「ポンポン」を締めると、「みなさん生きてますか? これからも生きていきますか? 一緒に生きてくれますかーーー?」と力一杯叫び、「ロケットスニーカー」「未来タクシー」を会場一体となった大合唱で本編を終えた。

すかさず“もう一回”コールが沸き上がり、アンコールで再びステージに登場した彼女はドレッシーな2ピース姿。翌日でデビュー丸9年を迎え、10年目に突入するという彼女は「ここまで私を見捨てず、楽曲を聴き続けてくれて本当にありがとう」と、ファンへの感謝の気持ちを口にし、デビュー・シングル「桃ノ花ビラ」のカップリング曲「向日葵」を披露。そしてもう一つ、忘れてはいけないのが、この日は大塚 愛の誕生日当日だということ。とうとう30歳になったということで、客席からは「おめでとう!」に混じって「三十路~!」という声も(笑)。そんなファンのツッコミも彼女は嬉しそうだった。「Birthday Song」でケーキと共にお祝いした後は、お待ちかねの「CHU-LIP」。当然のことながら南流石、MONDOといった“チューリッパーズ”もステージに全員集合し、大団円の終わりを迎えた。

しかしここで終わらないのがアニバーサリーライヴ【大塚 愛LOVE IS BORN ~9th Anniversary 2012~】。
ツアーTシャツに着替え、三たびステージに登場した彼女は満面の笑みを浮かべていた。改めて30歳を迎えた心境を「30代、楽しみだなぁ。ここから面白いことを近々報告できれば」と、頼もしい言葉で表現してくれた彼女。正真正銘のラストを飾る曲は「バイバイ」。その言葉の響きの切なさとは裏腹に、この日の「バイバイ」は、大塚 愛とファンとの再会の証であると同時に、ここから新たに始まるスタートの合図でもある明るさに満ちていた。

全てを歌い終え、一人ステージに残った彼女がマイクを使わずに客席へ呼びかけた言葉は「ただいま!」。「ありがとう」でも「またね」でもなく、「ただいま」。彼女の帰りを待っていたファンにとって、これほど嬉しい言葉はないだろう。改めて言わせていただきます。大塚さん、おかえりなさい!

≪セットリスト≫
1. ヒカリ
2. さくらんぼ
3. フレンジャー
4. Pretty Voice
5. チケット
6. ごめんね。
7. One×Time
8. ユメクイ
9. クムリウタ~桃ノ花ビラ
10. プラネタリウム
11. Is
12. アクション10.5
13. LUCKY☆STAR
14. ポンポン
15. ロケットスニーカー
16. 未来タクシー
<アンコール>
1. 向日葵
2. Birthday Song
3. CHU-LIP
4. バイバイ

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