90年代のJ-POP界にも旋風を巻き起こした彼らは、まさに時代のカリスマだった。
94年には、坂本龍一と組んだGEISHA GIRLS(芸者ガールズ)で全米デビューを達成。
95年には、浜田雅功と小室哲哉が組んだユニットH Jungle with tとして『WOW WAR TONIGHT 時には起こせよムーヴメント』をリリース。この曲は発売数日で出荷枚数が100万枚を超え、オリコンチャートでは7週連続1位を獲得! 最終的にはダブルミリオンを達成し、お笑い芸人によるCDの売り上げとしては未だ歴代1位という、とてつもない金字塔を打ち立てている。

【ひっそりと発売された初のフルアルバム】
そんなダウンタウンの音楽史の礎を築いたとも言えるのが、今回紹介していく91年リリースの2ndアルバム『万力の国』だ。(88年の『GOBU-GOBU』は5曲入りミニアルバムなので、このCDが初のフルアルバムとなる)
全国区の人気となったダウンタウンが勢いにのって……というよりも、吉本の「売れるときに売る」商法でリリースされた感が強く、宣伝も控えめでセールスも振るわなかった。ジャケットにも二人は登場せず、男性と女性の「しんぼる」としか思えない松茸と蛤の写真のみ。
ファンサービスをスカす感じも、この頃のダウンタウンらしいっちゃあらしいが……。
【奥田民生、宇崎竜童ら超実力派ミュージシャンが集結】
しかし、松本自らが4曲を作詞するなど、音楽への本気度は高め。
全14曲中(1曲はインストゥルメンタル)、ダウンタウンとして5曲、浜田雅功は4曲、松本人志も4曲のヴォーカルを務めている。
注目は、作曲陣の豪華さ。奥田民生、所ジョージ、宇崎竜童、島田紳助、佐久間正英と実力派が大集合! 坂本龍一や小室哲哉と組む以前から、すでにこんな豪華なコラボが実現していたのだ。
しかも、後の大ヒット曲の原点ともいえる楽曲が見え隠れするのも見逃せない。
【ダウンタウンの漫才を歌にアレンジ?】
『メ・ト・ロ』はダウンタウンの掛け合い漫才を前奏&間奏に大胆フィーチャー。
照れ笑いがそのまま収録されているアドリブ感も含めて、GEISHA GIRLS(芸者ガールズ)の原点と呼べるかも知れない。
【松本人志の趣味嗜好が色濃く反映されたエキゾチックマン】
『戦え!エキゾチックマン』は、作詞・歌ともに松本が担当。
こういった架空のヒーロー物主題歌の楽曲は松本が得意とするところで、『ダウンタウンのごっつええ感じ』初期の人気コント「ミラクルエース」も同じ系譜に連なり、後に50万枚を売り上げる『「エキセントリック少年ボウイ」のテーマ』の大ヒットに繋がっていく。
【浜田雅功の歌唱力の高さを実感する】
全体の感想としては、あくまでコントの領域として歌う松本に対して、浜田の歌は本気であることに尽きる。切々と歌い上げるバラードに笑いの要素はなく、ひたむきに楽曲に取り組んでいる。
この、浜田の音楽への真摯な姿勢があったから、H Jungle with tとしてのメガヒットは生まれたと筆者は思う。その意味でも、埋もれさせたままではもったいない貴重な名盤と言えそうだ。
ダウンタウンの二人からは「余計なお世話や!」ってツッコミが聞こえてきそうだが……。
(バーグマン田形)