
10話は、こんな話
新次郎(玉木宏)は、あまりの字の汚さにビリビリに破られていたあさ(波瑠)の手紙に気づき、それを読むと、あさの頼みを聞いて惣兵衛(柄本佑)の元へと向かう。惣兵衛は母・菊(萬田久子)及び女性のことを忌み嫌っていた。
なんでなんで相撲
弥生(陰暦3月)。いよいよ、あさとはつ(宮崎あおい/崎の大は立)の結婚が近づいてきた。嫁入り支度しているふたりが可愛らしうて可愛らしうてならない。お人形さんのようだ。着物もかんざしもええなあ(似非京ことば)。
だが、あさの心は穏やかでない。2ヶ月前、新次郎に惣兵衛のことを教えてほしいと手紙を書いたのに返事が来ないことにも、姉をあのいやな白蛇はんのところに嫁がせることにももやもやするし、自分についてくる女中が、うめ(友近)ではなくなったことも引っかかっている。マリッジブルーも手伝ってるのか、気持ちのもっていき場がなくなったあさは、うめに誘われて相撲をとる。
「なんで? なんで?」とわめきながら体中のエネルギーを放出させ続けるあさ。なんでなんでと世の中に問いかけているようで、結局最後は、新次郎から返事が来ないことのストレスを発散させているし、さらに最後はうめとの別れを惜しんでいる。混沌としてはいるものの、すべて本音なのだ。そういうものなのだ、人間は、きっと。
物騒な白蛇はん
新次郎の訪問をあさの差し金と察する鋭い惣兵衛。「殺す」とか「折檻」とか物騒な言葉を吐くときの表情はぞくりとさせる。
江戸末期は、刀やピストルをもったひともいて、まだまだ死が身近にあったのかもしれないが、いつかお母さんを殺そうと思っているなんてことを朝っぱらから聞くとドッキリ。
惣兵衛は女性のことを「狡るうて煩わしいて意地汚いさかいな」と思っていた。マザコンじゃなかったのだ。
惣兵衛いわく、菊は「男なんかただの家のための道具と思ってる」らしい。そういう意味では菊も、女が男に付き従う世の中の逆を行っている先進性のある人物ではないか。だからと言ってなかなか簡単には仲良く出来なそうなこわさだが。はつは、白蛇はんの凍てついた心を溶かすことができるのだろうか。
(木俣冬)